資料2…低レイノルズ数の直管内入口流れ



 直管内流れにおいて、管入口で一様流が流入される場合、その下流では管壁の粘性の影響により徐々にポアズイユ流へと変化していく。このような直管内入口流れの研究はすでにNikuradse(1)により行われている。彼によると、層流状態で管内径D、管内レイノルズ数Reにおいて、入口からの距離xx/(DRe)で無次元化した位置における半径方向速度分布は、管内平均流速で無次元化することによりにReに依存無く一つの分布にまとめられることが示された。これはレイノルズ数相似性の例として非常に有名である。
 しかしながら、近年の数値解析の発展により、Nikuradseが測定することが困難であったと思われる低レイノルズ数および入口近傍における入口流れを知ることができるようになった。Friedmann(2)は近似の無いNavier-Stokes方程式を用いて数値解析を行った。その結果を下図に示す。図より、低レイノルズ数かつ入口近傍においてNikuradseの実験には見られなかった速度分布の湾曲を示した。この速度分布の湾曲とは、中心速度よりも管壁近くの速度が大きくなる現象である。
 
低レイノルズ数における円管内入口近傍での速度分布
(U0は円管内平均速度)
 そこで我々はNikuradseの相似則が成り立つ範囲を調査するために、Re=25〜2000において計算を行い、各ReNikuradseの速度分布を比較した。その結果、Re=2000では、ほぼ全領域においてNikuradseの実験結果と良く一致した。また、r/R=0の速度がNikuradseの結果から最も大きく異なっていたことがわかった。そこで、Re=2000r/R=0における速度を基準として、すべてのRer/R=0における速度と比較した。基準値から90%までの差をレイノルズ数相似性の成り立つ許容範囲とすると、
   Re≧200
   z/D>2
の領域であることがわかった。

参考文献
(1) Schlichting, H., "Boundary-layer theory", (1979), 242, McGraw-Hill.
(2) Friedmann, M., et al, "Laminar flow in apipe at low and moderate Reynolds numbers", Appl. Sci. Res., 19(1968), 426-438.