6. まとめ

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温度依存性粘性率をもつ熱い流体が冷やされながら流れるときの振る舞いを調べるため,一次元モデルと一次元並列モデルで境界の流速を与えたときの定常流について考察し,数値実験による解析を行った.

一次元モデルでは,粘性率の温度依存性がある程度大きくなると,ある流速の範囲で特性曲線の傾きが負になり,負性抵抗が現れた.この条件のもとでの定常流では,流速が大きい状態の方が圧力勾配が小さくなる.

一次元流れを並列に複数つないだモデルでは,負性抵抗が現れるときに定常解の分岐が起こり,一様(対称)な条件のもとで非一様(非対称)な流れが定常状態として存在し,また,一様な流れが不安定になる場合があることがわかった.一次元流れという非常にシンプルなモデルで,媒質の性質や境界条件といった流れの状態に影響する条件が全て一様,対称であるにもかかわらず,非一様,非対称な流れが定常的に生じることと,その際の基本的なメカニズムの理解が得られた.

また,流れの状態を流速によってLNHの3つに区分することで複数並列モデルの解の分岐を一定の法則で記述することができた.

Whitehead and Helfrich(1991) のモデルでは,一次元流れで粘性率の温度依存性がある程度以上に大きい場合に流速(流量)が周期的に変化する周期解が得られており,「定常解から周期解への遷移が定常状態での圧力差と流量の関係の非線形性によっている」ことが指摘されているが,周期解が現れるためには一次元流れの入口に接続された「弾力的な液溜り」の存在が重要である.このモデルでは,問題となる一次元流れの流量(=液溜りから流れ出る流量)にかかわらず液溜りに一定のペースで流体が供給されることで圧力差が変化しており,この液溜りがちょうど発振回路のコンデンサーのような役目を担っている.

本論文では,シンプルな一次元モデルの解析によって,粘性の温度依存性によって負性抵抗が現れること,そのために流れがある特定のパターンを維持することが示され,温度依存性粘性率をもつ流体の不安定流動のメカニズムに関する基本的な知見が得られたが,これらを二次元モデルへと発展させたときにも流れが自己組織化して何らかのパターンが現れることが考えられ,Wylie and Lister(1995) Wylie et al.(1999) で扱われている割れ目噴火のマグマの流れの局在化の現象などについて,より根本的な理解の手がかりを得られる可能性がある.


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