3. 結果

3.1 準周期解と非周期解

強制として与える東西一様ジェット(4)のパラメータを
( U, φ0, B ) = ( 180m/s, 50o, 15o )とすると準周期解が、
( U, φ0, B ) = ( 180m/s, 50o, 10o )とすると非周期解が得られる。
この2つの解での混合のようすを対比的に調べる。

図1は、その2つの解について、緯度50度上の1点においてポテンシャル渦度の時系列をとり、そのパワースペクトル密度を調べたものである。

図1: 1点(λ, φ)=( 0o, 50o )におけるポテンシャル渦度の時系列についてパワースペクトル密度をとったもの。(a)が準周期解について、(b)が非周期解についてのもの。

(a)ではf1=0.290 day-1とf3=0.241 day-1という2つの周波数とその線形結合の周波数(mf1+nf3)のみを含んだ線スペクトルとなっている。f1とf3は互いに非通約であることからこの解は準周期的であるといえる。ここで、f1とf3は波数1と3のプラネタリー波の周波数に対応している。一方(b)は、卓越する周波数がいくつかあるもののノイズレベルが上昇しており、非周期解となっていることがわかる。

それぞれの解での、東西平均した東西風(u)、PV(q)の緯度分布を描いたものが 図2である。左が準周期解、右が非周期解で、上段が東西風の緯度分布、 下段がPVの緯度分布を表している。 ここで、点線はu0, q0すなわち強制で与える東西風およびPVの緯度分布である。

図2: 東西平均した東西風、ポテンシャル渦度の緯度分布。点線は強制として加えているものの緯度分布。

どちらも緯度50度付近にジェットの中心があり、その付近で PVの南北勾配が大きい。ここが極渦の縁にあたる。 強制されるPV(点線)の南北勾配はジェットの両側の35度付近と、60度付近で負になっているので、 それぞれの緯度帯で順圧不安定の必要条件を満たしている。 すなわち強制項は、常にジェットを不安定化させようとする傾向を持っている。 これに対して出現する流れ(実線)は、強制よりもやや弱く幅広いジェットとなっている。 ジェットの赤道側ではPVの負の勾配はなくなっており、PVは25度から40-45度でほぼ一定である。 一方、極側では負の勾配は弱められてはいるが残っている。