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4. 計算結果: ダストのある場合

ダストのない場合, キロメータサイズの対流にともなう風によって生じる地表摩擦は 対流が活発化する午後になると大きくなる (図 5). 大規模場の背景風とキロメータサイズの対流にともなう風との重ね合わせを考慮すると, 午後の地表摩擦はダストの巻き上げに必要な臨界値を確実に越える (図 6). 本研究で用いた対流モデルにおいてダスト巻き上げを確実に発生させるためには, 大規模の背景風を数値モデルに考慮する必要がある. しかし,

  • キロメータサイズの対流の循環構造には, ダストの影響と大規模場の背景風の影響の両方が現れると予想される
  • 本研究ではキロメータサイズの対流に対するダストの影響に注目したいので, キロメータサイズの対流に大規模場の背景風の影響が現れるような計算設定は 望ましくない

という理由から, ここでは大規模場の背景風を考慮してモデル内で自励的に ダストを巻き上げることを断念し, ダストの巻き上げに必要な臨界地表摩擦を適当に調節し, 午後になるとキロメータサイズの対流にともなう風によって ダストが巻き上げられるような計算設定をおくことにした.

調節した臨界地表摩擦の大きさは 0.01 Pa である. この大きさは午後になるとキロメータサイズの対流による地表摩擦の最大値は 0.01 Pa を越えること (図 5), 複数の場所で間欠的に 0.01 Pa を越える地表摩擦が得られること (図 6) に基づき決定した. 初期条件はダストのない場合に示したダストのない場合の 6 日後の LT = 06:00 の結果である. 計算は 6 日間行った.

水平平均したダストの可視光 (波長 0.67 μm) に対する光学的厚さの時間変化を 図 9 に示す. 光学的厚さは巻き上げ 1 日目に急激に増加し, その後はほぼ一定の値 (約 0.7) となる. 以下ではダスト混合の様子 (1 日目 と 2 日目), および, ほぼ平衡状態にある 6 日目の対流場の様子を示す.

  1. ダストの混合の様子
  2. 平均場の様子
  3. 対流場の様子

図 9: 水平平均した可視光に対するダストの光学的厚さの時間変化. 横軸は初期条件からの計算時間.


2次元非弾性系を用いた火星大気放射対流の数値計算
Odaka, Nakajima, Ishiwatari, Hayashi,   Nagare Multimedia 2001
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