2.実験装置および実験手法
実験装置
 
直径800mm、厚さ18mmのアルミ製円盤を水平に設置し、反時計方向にW =4.4rpsで定速回転した。円盤表面には半径r =190mmの位置に直径0.5mmの孔が設けられ、その裏側に設置されているスピーカによって微小な噴流を撹乱として導入できる。

撹乱位置におけるレイノルズ数はR=r(wD/n)1/2  256であり、C-Fモードに対する臨界レイノルズ数Rc 280(Itoh 1998a)よりやや低い。ここでwD=2pW (rad/s)は回転角速度、nは動粘性係数である。

本実験条件ではR ≧470において自然発生する非定常的な乱れを検出できる。これより小さいレイノルズ数の範囲では境界層の速度分布はCochranの理論値と良く一致する。

熱線の軸がr 方向に平行に向けられたIプローブを円盤外部に固定したトラバース装置によって移動し、周(f)方向速度成分vfのみを計測した。

f方向の座標原点は撹乱孔位置とし、時計方向を正とした。また、撹乱発生時刻をt/T=0とした。ただしT=1/W は回転周期である。計測高さz(mm)はz =z (wD/n)1/2で無次元化された。計測はすべてz =1.35で行われた。この高さにおける周方向平均速度は層流領域では局所回転速度の約36%である。

図1 実験装置概略

データ取得と解析
 

円盤の回転に同期したトリガパルスはプローブがf =0の位置を通過する瞬間に立ち上がり、そこから時間tD遅れてスピーカを駆動した。

スピーカ駆動信号を与える周期は前後の撹乱が重ならないようにするため2回転分以上とした。

データは10kHzサンプリングでAD変換した。

瞬間流速vfは撹乱の無い基本流の局所平均流速V*と瞬間速度変動v*によりvf= V*+v*と表せる。これを局所回転速度で無次元化し、vf/rwD=V +v と書く。また、速度変動の集合平均値<v >および乱れ強度の集合平均値<v’>を次式で定義する。

                                          (1)

                  (2)

 ii 番目の撹乱を表し、< >は集合平均(N=64)を表す。データ解析の詳細は付録4を参照。

図2 データ取得のタイミング