3.実験結果及び考察
 
3.3 局所乱流塊の移動速度
 
ある時刻における乱流塊の輪郭を周方向に見たときに最も下流側を前縁、最も上流側を後縁、半径方向に見たとき最も外側を外縁、最も内側を内縁と呼ぶことにする。図は各エッジの時間変化をプロットしてある。

前縁と外縁の軌跡はほぼ直線的であり、各移動速度が一定であることを示している。
特に前縁の移動速度は約0.85wDであり、乱流斑点の前縁の移動速度(付録1)と良く似ている。

後縁および内縁の移動速度は一定でなく時間の経過と共にやや遅れる傾向がある。

Lingwood(1996)はR 510に達すると撹乱の群速度がゼロとなる絶対不安定(付録3)が生じることを理論的に予測し、図bに示すように波束の内縁が時間の経過と共に定位置に留まろうとする傾向のあることを示した。本実験は撹乱の強さや撹乱を導入した位置のレイノルズ数などが彼女の実験条件とは異なるが、レイノルズ数が約400を越えるとどちらも同じような軌跡をたどる点が興味深い。ただし、本実験では定在渦のでき始めるレイノルズ数がLingwood(1996)の実験よりも低いため、図に示す範囲までしか軌跡を追うことができなかった。

絶対不安定が三次元境界層中で生じるか否かは未だに議論のあるところであり、実験によって移流型撹乱を追う場合には群速度がゼロになるかどうか分かる前に定在渦が発生し、結局不明確な結果しか得られないことはBippes(1999)なども指摘するとおりである。

 



図5 局所乱流塊の縁の軌跡. (a)周方向,(b)半径方向. 図(b)中黒色の記号はLingwood(1996)の弱い局所撹乱に対する結果, 黒い鎖線は絶対不安定の臨界レイノルズ数 510.