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: 謝辞 : 秩序渦と乱流場との相互作用について : 5.4 エネルギースペクトル


6. 結論

秩序渦と乱流場との相互作用のDNSを行い、両者の相互作用による渦構造の変化を 可視化と統計手法によって解析した。乱流場中の微細渦構造は秩序渦の差分回転に よって活性化され、スパイラル状のフィラメントを形成する過程を捉えた。 秩序渦には乱流場との相互作用によって長波長の変形が起り、 大規模渦構造の崩壊へと至る過程が観察された。

周辺乱流場の巻き取りによって、秩序渦はランダムな方向を向いていた微細渦構造 を周方向に揃える。その結果、渦核の周辺では $\omega_{\theta}$成分を持つ微小 撹乱が増幅される。これは秩序渦の差分回転によるものであり、 RDTの描像とよく一致する。 秩序渦が2回転するとRDTの適用限界を越え、フィラメント が渦輪を形成し、延長されて微細化が促進されると、 渦の間隔も狭まる様子が渦構造の可視化により観察された。

渦核外部では平均流の持つエネルギーは減少し、それにつれて撹乱エネルギーが増 大することを統計的に確かめた。これは秩序渦の持つ大規模構造のエネルギーがカ スケードし、フィラメントを通して効率よくエネルギーを散逸していると言える。

秩序渦内部では異方性のある撹乱の発生を確認した。 半径方向$r$、周方向$\theta$の変動 は増幅され、 $z$方向の撹乱の増幅は抑制される様子を統計的に捉えられた。 これは渦核内に発生する渦波を捉えたものであり、軸対称性と 非軸対称性のモードを併せ持つ。 これらは$z$方向に長波長の成分を持ち、時間的に増加する。 その結果、 秩序渦の大規模構造を大きく変化し、後にこの構造を崩壊させる一因となる。

このような非線形相互作用の発生は秩序渦が初期値に持つ循環$\Gamma_0$の大きさ に依存する。循環が強い($\alpha=24$$40$)ならば、秩序渦の差分回転によってフィラメント構造が生成され、上記の様な渦の変形が見られる。 一方$\alpha $が小さい($\alpha=14$)と計算開始直後から秩序渦と乱流場との非線 形相互作用が発生し、大規模渦構造が線形過程を経ずに崩壊することがわかった。



Naoya Takahashi 平成14年9月17日