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4 固有値

小節3.1,3.2,3.3での 固有値問題を数値計算し,固有振動数$ \omega $を得た. このとき, 離散化された固有値問題(式(12)と式(24))を, それぞれ線形代数パッケージIMSLを用いてQR法で解いた. 展開項数$ N$は今回の計算では$ N=40$で打ち切っている. これは$ N=90$の結果と5桁まで一致したこと, 計算時間が$ N$の増加とともに極端に長くなることから, $ N=40$で十分と判断した. 接触線を固定した時の固有振動数$ \omega $を数値計算で求めた結果を 表2に示す. 対応する全球の場合の次数$ n$と周回方向の波数$ m$で整理する (速度ポテンシャルの展開の主たる項が $ P_n^m(\cos\theta)$となる).

表 2: 様々な周方向波数$ m$についての固有振動数$ \omega $. 接触線を固定した場合の固有振動数($ \omega $)と,全球の場合の固有振動数$ \omega _n$.
厳密解(全球) 数値解
次数$ n$ $ \omega _n$ $ m=0$ $ m=1$ $ m=2$ $ m=3$ $ m = 4$
1 0   2.220      
2 2.828 4.415   4.854    
3 5.477   7.449   7.864  
4 8.485 10.564   10.819   11.215
5 11.832   14.206   14.497  
6 15.491 17.99   18.164   18.461
7 19.422   22.180   22.399  
8 23.664 26.524   26.654   26.875
9 28.142   31.198   31.373  


接触線を固定すると固有振動数が増加する. 計算結果では, 異なる$ m$について異なった固有振動数が存在し, また接触線が滑る場合では角振動数が0(ゼロ)である$ n=1$のモードが出現した. 接触線を固定したために周方向波数$ m$についての縮退が解けたことになる. 各固有振動モードで$ (m+n)$が偶数で,かつ$ m\le n$である.

この数値的結果を 実験での共鳴角振動数に良く対応する(図5). 実際,水の液滴に非軸対称振動を加えた場合, 塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の混合溶液の液滴に 軸対称・非軸対称振動を加えた場合の両者で, 5%以内の誤差で一致していることが確認された.

図 5: 固有振動数の比較. 点:実験値,曲線:計算値. $ {\rm H_2O}$:水に非軸対称振動を加えたもの, $ {\rm HCl}$: 塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の混合溶液に軸対称, 非軸対称振動を加えたもの.
\includegraphics[width=0.45\textwidth]{eps/hikakuEN.epsi}


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鈴木, 高橋, 宮嵜, 青山