粒子画像流速測定法と渦運動エネルギーを用いた回転水槽実験で発生する傾圧不安定波の定量化 << Prev | Index| Next >>

4. まとめと今後の課題

回転水槽実験に粒子画像流速測定法(PIV)を用いることで、発生する傾圧不安定波動やジェットの挙動を定量的に検出することができた。そして、その算出した運動場から運動エネルギーを見積もり、軸対称成分から得た平均場の運動エネルギーと、非軸対称成分から得た渦運動エネルギーに分解した。さらに、非軸対称成分の流れに対してフーリエ解析を行い、各波数毎の運動場から得られた波数別渦運動エネルギーを算出した。以上の解析を、特徴的な3つの回転水槽実験の結果に適応させて検証すると、卓越波数の同定やその比率が算出でき、どういった傾圧不安定波や運動が発生しているのかを定量的に理解できることを確認した。

PIVと波数別渦運動エネルギー比率の解析方法は、様々な回転水槽実験の結果に対する定量的な理解に有効になると考えられる。実験1のように、規則正しい傾圧不安定波が発生する実験結果では、卓越波と高調波成分の渦運動エネルギーの支配率が大きく、サイドバンドが小さい解析結果となった。実験3のようにいびつな非軸対象運動が発生した実験は、卓越波数成分に比べてサイドバンドの渦運動エネルギーも無視できないくらい大きく、複数の波数を持つ波動が重なっていると理解できる。また、実験2で示したように、平均場の運動エネルギーが支配的な解析結果は、Hide(1969)の分類では軸対称運動に区分される実験結果に対応すると考えられる。

本研究では、最新の技術を用いることで、回転水槽実験で発生する水面の運動場が、時間・空間的に高解像で算出できることを紹介した。現代の技術による計測は、運動場だけでなく、最新のサーモグラフィーを用いると高解像度の温度場が測定できることも確認されている(付録2)。現状では、本研究の実験装置で設置するカメラは1台のみであり、運動場を算出する高感度カメラと同時には測定できていない。しかし、将来2台のカメラが設置・撮影できるように実験装置を改良することを計画している。高感度カメラとサーモグラフィーの撮影を一度に行い、温度場と運動場の同時計測が可能になることで、運動場と温度移流の関係も議論することができる。

本稿で示したPIVや運動エネルギーを用いた定量化は、全ての回転水槽実験の結果に適応できると考えられる。現在まで、回転速度・温度差・水深の条件を変えた実験を400回以上行っている。今後は、その実験結果全てに本研究で示した手法を適応させて、その解析方法の妥当性と、定量的な分類結果を報告する予定である。


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