C. モデルの詳細

3 次元灰色大気構造の太陽定数依存性と暴走温室状態 C.d. 蒸発・凝結による表面気圧変化 C.f. 上層減衰層

e. 湿潤対流調節スキーム

通常の大気の GCM において湿潤対流を扱う際, 水蒸気量が少ないという近似を 用いている. しかし, 太陽定数が増大した場合大気中の水蒸気量は大きく増大するので この近似を用いるのは適切でない. 本研究では, 水蒸気が少ないという近似を用いない対流調節スキームを使用した. 以下ではその詳細について述べる.

断熱の式

水蒸気と乾燥空気からなる空気塊における断熱の条件は,
displaymath6860
となる. 本論で考えているように cpn=cpvの場合について差分化すると, 断熱の式の差分形:
\begin{displaymath}
\Deqlab{断熱:差分}
 B \cdot \Delta T_{k-1} + C \cdot \Delta T_{k} = ST\end{displaymath}
が得られる. ただし
eqnarray1260

eqnarray1273

eqnarray1304
ここで,
eqnarray1325

この断熱の式を用いて 1 次元問題における温度構造の決定・ 湿潤対流調節のパラメタリゼーションを行なう.

1 次元問題における断熱線の引き方

1 次元問題で下から断熱線を引く場合には, 断熱の式を満たすように, Tg, q*(Tg) から出発して最 上層まで下から順に Tk, qk = q*(Tk) を決めていく. 実際には, Tk-1, q*k-1 が与えられた条件の下で, Tk に適当 な初期推定値を与えて, そこからのずれを
\begin{displaymath}
\Delta T_{k} = \frac{ST}{C}\end{displaymath}
によって計算し, Tk を決定していく. 更に q*k は飽和蒸気圧曲線から決定する.

湿潤対流調節スキーム

3 次元計算において, 以下の条件が満たされた点においては 温度分布, 水蒸気分布を湿潤断熱で決まる構造に調節する.

  1. 成層不安定である.
  2. 飽和または過飽和である.

調節を行なうために断熱の他に, 調節の前後における湿潤静的 エネルギー保存の条件
\begin{displaymath}
\Deqlab{ds 保存}
 \sum \Delta (c_{pd} T_k + L q_k)= 0.\end{displaymath}
を用いる. この式を差分化すると湿潤静的エネルギーの保存式の差分形:
\begin{displaymath}
\Deqlab{ds 保存:差分}
 \Delta T_{k-1} = \alpha \Delta T_k + \beta\end{displaymath}
が得られる. ただし
\begin{eqnarray*}
\alpha & = & - \frac{1 + \gamma_k}{1+\gamma_{k-1}}
 \frac{\Del...
 ..._{k-1}}
 \frac{L}{C_p} \Delta \hat{Q} 
 \frac{1}{\Delta p_{k-1}}.\end{eqnarray*}
ここで,
\begin{eqnarray*}
\Delta \hat{Q} & \equiv &
 \Delta p_{k-1} (q_{k-1} - q^*(T_{k-...
 ...\equiv \left. \frac{L}{c_p} \DP{q^{\ast}}{T}
 \right\vert _{k-1}.\end{eqnarray*}

断熱の式の差分形に湿潤静的エネルギーの保存式の差分形を代入すると, 次のようになる.
\begin{displaymath}
\Deqlab{delta T(k)}
 \Delta T_k = \frac{ST - \beta B}{C + \alpha B}\end{displaymath}

この式と湿潤静的エネルギーの保存式の差分形から tex2html_wrap_inline6892, tex2html_wrap_inline6894 を求め, 比湿を
\begin{eqnarray*}
q_{k-1} & = & q^*(T_{k-1} + \Delta T_{k-1}), \\  q_{k} & = & q^*(T_{k} + \Delta 
T_{k})\end{eqnarray*}
と決める.

以上の調節を下層から順番に行ない最高 10 回繰り返す.


C.e. 湿潤対流調節スキーム 3 次元灰色大気構造の太陽定数依存性と暴走温室状態 C.d. 蒸発・凝結による表面気圧変化 C.f. 上層減衰層