hajimeni.gif (3461 バイト) QBO実験における内部重力波の可視化とWKB解析 QBO実験における内部重力波の可視化とWKB解析 実験装置

赤道上空の成層圏では、東風と西風が周期的に交互に現れることを、Veryard & Ebdon1),Reed2)が明らかにした。この周期が約26ヶ月と2年より少し長いことから、この現象を「準二年周期振動」(QBO) と呼ぶ。

この現象の原因が、対流圏と成層圏の圏界面から上向きに伝播する内部波にあることが Lindzen & Holton(1968)3),Holton & Lindzn(1972)4)によって示された。赤道では、そこを境にコリオリパラメータが符号を変えるため、赤道に捕捉されて東向きと西向きに伝播する2種類の波が存在する。これらの波は、そのメカニズムは異なるものの、それぞれ位相速度の方向 (東向きまたは西向き) の運動量を、波とともに運ぶ。この運動量は波が減衰するとともに平均流の運動量として残ることになる。QBO は、これらの波の減衰が平均的な流れの存在によって大きく影響を受け、2つの波が異なる場所で消滅し、それぞれ反対方向に平均流を加速することから起こる。

Plumb & McEvan 5)はこのメカニズムを検証するため1978 年に水槽実験を行った。塩水で密度成層を作りこれを成層圏とみなした。この成層の下部からポンプによって内部重力波を入射すると、水槽内の水は波に比べ非常に長い周期で左右に周期的に流れを変化させた。

この実験の記録は、16mmフィルムとして広く配布されているが、その後20年たった現在でも、これまで追試の報告は一件もない。また、Plumb & McEvan の実験では、中立浮きを使った平均流の可視化はされているものの、運動量を運ぶ内部重力波は可視化されていない。

そこで、本実験では QBO 実験の追試として Plumb & McEvan と同様の可視化法で平均流の可視化を行い、平均流の振動を確認するとともに、内部重力波を可視化して、その減衰の様子を調べ、WKB近似による理論との比較を行った。