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大陸プレートの影響により引き起こされる
マントル対流の水平セルサイズ

松本 淳子 ・ 竹広 真一(九大理)

大陸プレートの影響により引き起こされる マントル対流の水平セルサイズに関して, 数値的な方法と理論的な方法により調べた. これまでの数値実験あるいは室内実験の研究において 取り扱われているよりも横長な大陸プレートを扱った.

用いた数値モデルは計算領域が 12x1 の 2 次元ブシネスク流体モデルである. 大陸プレートは流体層上部に速度場が 0 の動かない領域として実現させた. 深さに対するプレートの水平方向の大きさを 4,5,6, レイリー数を Ra=104, 105, 106 と変化させて, それぞれの場合について対流の時間発展を計算した. プランドル数とプレートの厚さはそれぞれ 100.1 に固定した. 全ての計算結果において, プレートの下から上昇し, プレートのないところで下降する対流セルが形成された. しかしながら, そのセルの水平スケールは Ra=105, 106 の場合と Ra=104 の場合とで大きく異なる. Ra=104 の場合にはセルの縦横比がほぼ 1 であり, プレートの端に上昇流が形成される. これに対して Ra=105, 106 の場合には セルが横長となり, プレートの中央に上昇流が形成される.

境界層理論を大陸プレート下の対流に適用することにより, 大陸下と外側との水平平均温度の差を見積もった. さらに, この水平方向の温度差が引き起こす対流の水平速度の大きさを レイリー数と対流セルの水平スケールの関数として計算した. この速度の大きさと, 鉛直温度差により引き起こされる 熱対流の速度の大きさを比較することで, どの程度までの横長な対流セルが形成される可能性があるかを推定した. その結果, レイリー数が大きくなるほど横長な対流セルが 形成されやすいことが示された. 理論的に予測される対流セルの水平スケールの限界は 数値計算の結果と整合的であった.

Ra=105, 106 での最大水平スケールは それぞれ 10, 30 となった. これらの値は, 全マントル対流の場合には 大陸中央に大陸の端をまたぐ対流セルの上昇流が形成可能であるが, 2 層対流の場合は大陸の端寄りに上昇流が形成される 可能性があることを示唆している.

本文
  1. はじめに
  2. モデルと支配方程式
  3. 数値計算
  4. プレート下の対流の境界層理論
  5. 対流セルの水平スケール
  6. 結論と議論
付録
1999年5月18日投稿
1999年7月16日受理

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