特集
 ながれマルチメディア ―― 学会電子化への実験

京都大学総合人間学部 酒井 敏

1. 事の始まり

1997年3月8日、私は初めて日本流体力学会の編集委員会に出席しました。前任者から、「たいした仕事はないよ」と言われて引き受けたものの、なんとなく気が重く「余計なことは言わんとこ」と固く心に決めて東京行きの新幹線に乗り込んだのでした。 その編集委員会で、私は学会創設30周年記念事業というものをはじめて知りました。しかし、学会がいつできたか、ということなど私にとってはどうでもよかったので、当初の計画どおりじっと黙って座っていました。ところが、その事業の一環として、ある研究会がWeb上に公開している内容を「ながれ」の特集記事として掲載したらどうか、という話が出たとき、私の耳がビビビーンと反応し、反射的に私の口が

「Web で公開しているものを、 紙に印刷するんですかぁ?」

と勝手にしゃべってしまいました。私は、その研究会の内容も知りませんでしたが、Webで公開しているということは、カラー画像や動画が入っているだろう、と勝手に想像し、それを紙に印刷したら、まったく面白くなくなってしまうではないか、と思ったのです。