特集 ながれマルチメディア ―― 学会電子化への実験/酒井 敏

2. ながれマルチメディアが目指したもの

その後、いろいろな紆余曲折はありましたが、CD-ROMに収録するコンテンツとして、「動画などを含む原著論文」を募集しよう、ということになりました。流体力学という分野の性質上、原著論文に動画や大量のカラー画像が含まれていても当然で、それを実現する事は、学会30周年記念事業にふさわしい、という判断です。 しかし、問題も数多くありました。まず、

紙に印刷できないものが、 原著論文として受け入れられるか?

という点です。動画などを含むということは、紙に印刷できないということを意味します。動画に本質的内容が含まれているようなものを強引に紙にすれば、その論旨が失われてしまいます。しかし一方で、紙に印刷できないということは、業績リストに「別刷」を要求されたらどうするか?また、その論文を引用するにはどうすればいいのか?といったさまざまな問題が出てきます。