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回転流体における深い対流のプリューム構造

見延 庄士郎 (1,3), 金本 吉仁 (1)*, 岡田 直資 (2),
小沢 久 (3), 池田 元美 (2,3)

(1) 北海道大学・大学院理学研究科・地球惑星科学専攻
(2) 北海道大学・大学院地球環境科学研究科・大気海洋圏環境科学専攻
(3) 地球フロンティア研究システム

深い回転対流におけるプリューム構造を,非静水圧数値モデルを用いて,157の異なる物理パラメータの実験を行なって研究した. 変化させた物理パラメータは,コリオリパラメータ,拡散係数,表面浮力(熱)フラックスである. その結果,自然ロスビー数とフラックス・レイリー数の無次元平面において,2次元(2-D)レジームと3次元(3-D)レジームの分離曲線が,従来よりも高い精度で求められた.

次に,エントロピー増加率最大化仮説について,2-Dと3-D レジームの遷移を調べた.2-Dと3-Dの分離曲線において, エントロピー増加率は仮説と整合的に変化している. このことは,プリュームの振る舞いにおける レジームの遷移を,散逸システムの大極的な熱力学 的視点から理解する可能性を示すものである.

さらに2-Dレジームにおいて渦度の等値面の3次元の可視化によって,従来知られていなかったロール構造とマッシュルーム構造という二つの構造が見出された.ロール構造を特徴づけるのは,深さ1kmの流体中に生ずる水平数kmにおよぶ長いロール状循環で,この循環はロールの軸に直交する平面からわずかに傾いた平面を回転し,その鉛直渦度成分は下向き(高気圧性)を示す.同時に生じている低気圧性循環は,比較的短い楕円形を示す.一方マッシュルームは,上層の高気圧性の渦と下層の低気圧性の渦の対からなり, その渦対は鉛直上向き流によって結び付けられている. あたかも,高気圧性の渦がマッシュルームの傘に, 低気圧性の渦がマッシュルームの茎であるかのように, この渦対構造はマッシュルームに似ている. すでに知られている準安定な渦対からなる ヒートン構造に比べて,マッシュルームはより強い 時間変動をその構造自体に示している.これらの結果は,2次元レジームも上下の安定な渦対からなるヒートンだけでは説明できないことを示している.


corresponding author:
見延 庄士郎  (minobe@ep.sci.hokudai.ac.jp)
〒060-0810 札幌市北区北十条西八丁目
北海道大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻

*現所属:日本電子計算(株)

2000年9月30日投稿
2000年11月2日受理

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