はじめに


 収縮部下流の管壁からの流れ込み(bleeding)が無い円管内収縮部下流の流れ場については、収縮部下流のはく離域の大きさを示す再付着長さ(嶋脇、1999)と壁面圧力分布(嶋脇、2000)に着目して実験と数値解析によってすでに調査されている。その結果、低レイノルズ数の層流領域においてはそれらの値は収縮部出口における速度分布と直径比(収縮部内径と円管内径の比)に依存していることがわかった。
 そこで今回は収縮部下流の流れ場に大きく影響を与えるであろうと思われるbleedingがある場合の収縮部下流の流れ場について調査した。図1に示すように、収縮部から流れ出たジェットは収縮部出口ではく離して、その下流の管壁に再付着する。はく離したジェットは、ジェットとはく離内の流体との間のせん断力によってはく離域内の流体を下流へと引きずり持ち去る(谷、1984)。そこで、その持ち去られた流体を補いために再付着点から収縮部に向かってはく離内で逆流が生じる。管壁からの流れ込みがはく離内にある場合、逆流量は流れ込みによってまかなわれ、ジェットの再付着位置が下流へと伸びることが推測される。

図1 流れ込みがある場合の収縮部下流の流れ場の概念図

 このような収縮部下流で管壁より流れ込みがある場合の流れ場はいくつかの状況でみることができる。例えば、レイノルズ数が非常に高い場合では、ジェットエンジン内でのアフターバーナに伴う燃料の流入やスクラムジェットエンジン内での着火、燃焼の場面(例えば、新井、1997)である。また、低レイノルズ数では、鳥類の呼吸器官内に見られる一方向流れの生成の場面(Wang, 1992)である。一方向流れに関する詳細な説明は資料1にて示す。一方向流れの生成メカニズムの要因を探る際にも重要である。
 そこで、本研究では、特に生体内の流れ場を想定し、流れ場は層流であると仮定した。そして、数値解析により、収縮部からの流量Qbleeding流量Qbとの流量比 Qb/Q再付着点とbleeding位置との位置関係収縮部dの円管Dとの直径比d/Dをパラメータとして収縮部下流の流れ場および壁面圧力分布に及ぼす影響に着目して調査を行った。