E. 平衡状態の大気構造

E.j. 南北エネルギー輸送量

実験 S1380 における南北エネルギー輸送

実験 S1380 の場合, エネルギー輸送量の大きさは乾燥静的エネルギー と潜熱エネルギーで同程度である(図 1). 乾燥静的エネルギーの輸送では平均子午面循環による輸送と非定常擾乱による 輸送がほぼ同程度の寄与をしている. 全潜熱エネルギー輸送の分布は (蒸発量)-(降水量) が最も大きくなっ ている緯度 20 度付近から高緯度側に水蒸気が輸送されている ことを示している. 高緯度向きの輸送の中では非定常擾乱成分が最も大きく傾圧不安定が輸送を担っ ていると思われる. 緯度 20 度より低緯度側では平均子午面循環成分が赤道向きに, 移動性擾乱が極向きに輸送を行い全体では極向き輸送となる.

  (a) figure1(a) (b) figure1(b)

図 1: 実験 S1380 における南北エネルギー輸送. (a): 乾燥静的エネルギー輸送. (b): 潜熱エネルギー輸送. 赤線が全輸送量, 青線が平均子午面循環による輸送, 緑線が停滞性擾乱による輸送, 薄茶線が移動性擾乱による輸送を表す. 単位はいずれも W.

なお, 全輸送量, 平均子午面循環による輸送量, 停滞 性擾乱による輸送量, 非定常擾乱による輸送量の定義は以下の通りである. 物理量 X の全輸送量は
\int^{1}_{0}
   [ \overline{X \cdot v} ]
   d \sigma,
物理量 X の平均子午面循環による輸送量は
\int^{1}_{0}
   [ \overline{X} ] [ \overline{v} ]
   d \sigma,
物理量 X の停滞性擾乱による輸送量は
\int^{1}_{0}
   [ \overline{X^{*}} \overline{v^{*}} ]
   d \sigma,
物理量 X の非定常擾乱による輸送量は
\int^{1}_{0}
   [ \overline{X' \cdot v'} ]
   d \sigma
で定義される. ここで v は南北風, tex2html_wrap_inline7298 は時間平均, tex2html_wrap_inline7300 は東西平均, tex2html_wrap_inline7302X の東西平均からのずれ, tex2html_wrap_inline7306 は時間平均からのずれを表す. なお子午面循環成分においては鉛直平均部分は除去してある.

実験 S1380 における南北エネルギー輸送 E.j. 南北エネルギー輸送量