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赤道β平面浅水系の線形シアー流中の固有モード

谷口 博 (京大・防災研)・石渡 正樹 (北大・理)

(Received 14 March 2008; in revised form 27 June 2008)

赤道β平面浅水系の線形シアー流中の固有モード を広いパラメータ範囲で求めた. Taniguchi and Ishiwatari (2006) による 最低次の最大不安定モードの考察結果をもとにして, 高次の不安定モード, 中立モード, 連続モードに対して 考察を加えた. 得られた結果は以下の通りである.

  1. 連続モードの水平構造を子細に観察することにより, 赤道ロスビー波的な構造を持つ連続モードが存在することが示された. これは, 赤道ロスビー波は連続モードの一部に同化しているという Taniguchi and Ishiwatari (2006) の議論を支持するものである.
  2. Stevens (1983) によって得られていた高次の東西対称不安定モードを, 中立波の共鳴の観点から解釈した. 分散曲線を精査した結果, 高次の東西対称不安定モードは, 東進混合ロスビー重力波と連続モードとの共鳴, もしくは, 東進慣性重力波と連続モードとの共鳴によってもたらされることが示された.
  3. 近接する分散曲線が交差を起こす中立モードの性質を調べた. これらの中立モードは, 符号の異なる擬運動量を持つ連続モードと分散曲線の交差を起こしても, 共鳴を起こさない. これらの中立モードは, 慣性不安定領域の外側で大きな振幅を持ち, 慣性不安定領域の外側に計算領域が存在すると発生する.
  4. 赤道ケルビン波と西進混合ロスビー重力波の分散曲線が近づいた場合における, 両者の分散曲線の振る舞いを観察した. 計算領域を狭くした計算を実行することにより, 赤道ケルビン波の分散曲線は, 西進混合ロスビー重力波と共鳴を起こす際に折れ曲がることが確認された.

本文

  1. はじめに
  2. 方程式と解法
  3. Rossby モードの探索
  4. 高次対称モードの解釈
  5. 分散曲線が交差を起こす中立モードの性質
  6. 赤道ケルビン波, 混合ロスビー重力波の分散曲線の抽出
  7. まとめ

補遺

  1. 連続モードの構造変化
  2. 計算領域の南北幅を変えた場合の交差モードの数の変化
  3. 慣性不安定領域だけを計算領域とした場合の分散曲線の解像度依存性
  4. 交差モードの水平構造
  5. 参考文献
  6. 謝辞
  7. 著者連絡先

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