数値モデルの基礎方程式 Index Previous

以下、数値モデルの概要を簡略に述べる (技術的な詳細は中島(1994)を参照)。

力学的な枠組は、非弾性方程式系 (Ogura and Phillips, 1962) を用いる。

鉛直・水平成分の運動方程式は、

 

$\displaystyle\DD{u}{t}$ $\textstyle=$ $\displaystyle-c_{p}\Theta_{0}\DP{\pi}{x} + D(u),$ (16)
$\displaystyle\DD{w}{t}$ $\textstyle=$ $\displaystyle-c_{p}\Theta_{0}\DP{\pi}{z} + b + D(w).$ (17)

ここで、各式左辺の $ \DD{}{t} $ はラグランジュ的時間微分

\begin{displaymath}

\DD{}{t} \equiv \DP{}{t} + u \DP{}{x} + w \DP{}{z}\end{displaymath} (18)

である。また右辺の D は乱流混合の寄与であり、混合される物理量を Y と書いて、

\begin{displaymath}

D_{}(Y) \equiv \DP{}{x}(K\DP{Y}{x}) 

 + \Dinv{\rho_{0}}\DP{}{z}(\rho_{0} K\DP{Y}{z})\end{displaymath} (19)

により計算する。但し、K は乱流混合係数であり、 Klemp and Wilmhelmson(1978) にならい、風速場の 変形速度と局所的な鉛直安定度に基づき prognostic に計算する。

また ( 17 ) 右辺の b は浮力の項

\begin{displaymath}

b_{} \equiv g ( \frac{\theta}{\Theta_{0}} + (\frac{m_{n}}{m_{v}}-1) q_{v} - q_{c} - q_{r} )\end{displaymath} (20)

である。 また、uw には連続の式

\begin{displaymath}

\DP{(\rho_{0}u)}{x} + \DP{(\rho_{0}w)}{z} = 0 \end{displaymath} (21)

を満たすことを要請する。これにより、無次元圧力関数 $ \pi $ が診断的に定まる。

熱力学第一法則は、  

 \begin{displaymath}

\DD{\theta}{t} + w\DP{\Theta_{0}}{z} = 

 \frac{L}{c_{p}\Pi_{0}}( C - E_{r} ) 

 + D(\theta) +D(\Theta_{0}) + Q_{rad}\end{displaymath} (22)

である。ここで C は水蒸気の凝結、Er は雨水の蒸発であり、ま た、Qrad は放射過程の寄与を簡単化して表現した body cooling であ る。

水物質としては、気相(水蒸気)と液相のみを扱う。さらに液相を、雨水・雲 水に分け、雨水については周囲の空気に対しての落下を考慮する。すなわち、 雲微物理過程についてはバルクパラメタリゼーションを行なう。これら水物質 の保存の式は、

$\displaystyle\DD{q_{v}}{t}$ $\textstyle=$ $\displaystyle- C + E_{r} + D(q_{v}),$ (23)
$\displaystyle\DD{q_{c}}{t}$ $\textstyle=$ $\displaystyleC - P_{rc} + D{q_{c}},$ (24)
$\displaystyle\DD{q_{r}}{t}$ $\textstyle=$ $\displaystyle+ P_{rc} - E_{r}

- \Dinv{\rho_{0}} \DP{}{z}(\rho_{0}V_{T}q_{r}) + D(q_{r}).$ (25)

である。

運動学的境界条件として、領域の上端と下端で鉛直流がゼロであることを要請 する。また、水平方向には全ての変数について周期的であることを要請する。

雲微物理過程は、基本的に Kessler(1969) のバルクパラメタリゼーションに 従う。

雲水は粒の大きさが小さく、従って、水蒸気との間で瞬間的に saturation adjustment が起こるとする。即ち、移流などの項を計算した後の 温度と水蒸気量が過飽和状態となっている場合には、ちょうど飽和になる量の 水蒸気を凝結させる。一方同様に移流などの計算を行なった後、雲水が存在す るにも拘らず未飽和となっている箇所では、ちょうど飽和となるまで雲水を蒸 発させる。もし、それに必要な雲水が無ければ、全ての雲水を蒸発させる。以上 の過程で、当然、凝結の潜熱の出入りを計算に入れる。

雲粒は、まずその相互の衝突により粒径を増し、雨粒を生成する。この 過程を autoconvsersion とよぶ。雨粒が生成した後は、雨粒は落下しつつ雲 粒を捕獲して成長する事ができる。水物質の保存の式の中の Prc は、 この二つの寄与の和である。

Prc = Pautoconv + Pcollect (26)

autoconversion の項は、雲微物理のバルクパラメタリゼーションの中でも議 論の多い部分であるが、ここでは、Berry(1968) に従って

\begin{displaymath}

P_{autoconv} = \frac { 10^{6} \rho_{0} q_{c}^{3} }

 {60 ( 2 ...

 ..._{0} D_{0} ) }, \  N_{0} = 5.0 \cdot 10^{7}, \  D_{0} = 0.366\end{displaymath} (27)

により計算する。

雨粒は、常に指数型の粒径分布 (Marshall and Palmer, 1948 )をしてい ると仮定する。バルクの落下速度・雨による雲粒の捕獲・雨の蒸発は、この仮 定のもとで、それぞれ、

\begin{displaymath}

V_{T} = 12.2 q_{r}^{1/8}, \  P_{collect} = 2.2 q_{c} ( \rho...

 ...ot 10^{-2} ( q_{v}^{\ast} - q_{v} ) 

 ( \rho_{0} q_{r} )^{0.65}\end{displaymath} (28)

により計算する。


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Kensuke Nakajima
1/31/1998