特集 ながれの電子出版について/城之内 忠正

7. マルチメディア論文について

最後に,マルチメディア論文についてその問題点を考えてみます.前述のように,XHTMLで一元管理する方針に沿っていくと,既存のマルチメディア論文をXHTMLに変更する必要があります.内容的な変更ではないため編集委員会で作業しても問題ないと思われます.

現在のマルチメディア論文とPDFによる電子出版を比較して気が付いたのですが,PDFは論文がひとつのファイルであるという点です.

Web出版では,論文が文書ファイルやイメージファイル等の複数ファイルに分割されてしまい,データの管理を煩雑にしています.この問題はXHTML形式でも同じことですが,論文がフォルダに別れて複数のファイルから構成されると,論文数の増加がデータ管理を複雑にするでしょう.さらに名前(URL)の一意性という意味からも,ファイルの整理を慎重に行わなければなりません.

幸いにして,マルチメディア論文ではCD-ROM出版によってコピーを配布するので,永続性や一意姓の制約を受けないで済みますが,将来的には問題となりますから対策を考えておく必要があります.

電子出版は学会活動の手段を根本的に変える可能性があるため,言葉としては不適切かもしれませんが,ビジネスモデルを見直す必要があるのでしょう.いろいろな意味で,様々な論議を呼び起こし問題点を明らかにすることが,マルチメディア論文の大きな役割なのかもしれません.