A. 数理モデルの詳細   d. 放射モデル up previous next
A.d.i. CO2 の放射

CO2 の放射は赤外放射, 太陽放射ともに Goody バンドモデルに従って計 算する (例えば Goody and Young, 1989 を参照). バンドモデルを使用したのはダストのない場合の成層圏にあたる高度 10 〜 15 km の温度分布を精度よく計算するためである. 赤外放射は CO2 15 μm バンドの寄与だけを計算する. 大気中における上向き, および下向き赤外放射 , それによる放射加熱 は以下の式から計算される.

(A.23)
(A.24)
(A.25)

ここで はバンド幅, はプランク関数,

(A.26)

である( はプランク定数, は光速, はボルツマン定数, は温度 である). は波数 のまわりで幅 で平均した透過関数で, 以下の表現を用いる.



ここで は吸収線強度, は吸収強度と吸収線幅との 積の平方根, はその基準値, は有効光路長, は基準 圧力 (1013 hPa) である.

近赤外太陽光の CO2 による吸収は, CO2 の 4.3 μm, 2.7 μm, 2.0 μm バンドを考慮する. 当該バンド領域の下向き放射 とその収束による放射加熱

(A.27)
(A.28)

で表される. ここで , は太陽天頂角, は大気上端での入射太陽放射で,

(A.29)
(A.30)

である. ここで は太陽表面温度 (5760 K), はボルツマン定数 (5.67×10-8 Wm-2K-4), は火星軌道上の平均太陽定数 (591 Wm-2), は火星と太陽の平均距離, はその平均値, は全波長で積分された大気上端での入射太陽放射である. は季節, 緯度, 時刻によって変化する ( の計算方法は 付録 A.d.vi 節 を参照).

波数平均された透過関数は, 赤外放射の場合と同様に計算する. ただし有効光路


である.


2次元非弾性系を用いた火星大気放射対流の数値計算
Odaka, Nakajima, Ishiwatari, Hayashi,   Nagare Multimedia 2001
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