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6. まとめ

火星大気における鉛直対流の具体的な描像を明らかにするべく, 非弾性方程式系で記述された 2 次元数値モデルを用いた直接数値計算を行った. 得られた火星大気の鉛直対流はキロメータサイズの対流であることが明らかになった.

ダストのない場合, 対流セルのサイズは鉛直 10 km, 水平数 km 程度であった. このキロメータサイズの対流にともなう風の大きさは 20 msec-1 程度である. この大きさは対流プリュームの持つ浮力による自由加速によって見積もることができる.

ダストのない場合の, キロメータサイズの対流に伴う地表摩擦は 0.03 〜 0.04 Pa となる. これはダスト巻き上げに必要な臨界値程度の値である. キロメータサイズの対流による地表面摩擦の揺らぎを考慮してあげれば, 従来の火星 GCM では不可能だったダストの自然な巻き上げが計算可能になると予想される.

キロメータサイズの対流の風によってダストが巻き上げられる場合, ダストは 2 時間程度で対流層全域に広がる. ダスト巻き上げ時の流れ場のパターンはダストのない場合と比べあまり変化しない. これはダストの太陽放射吸収にともなう放射加熱はキロメータサイズの 対流にともなう流れ場には大きな影響を及ぼしていないことを意味する. すなわち, 巻き上げ時においてはダストは受動的トレーサーとして振舞う.

ダストが十分よく混合されると, キローメータサイズの対流の背は低くなる. これは大気上層に存在するダストの放射加熱により, 成層圏の温度が上昇したためである. 対流セルの縦横比はダストのない場合と代わらない. 対流にともなう風の大きさは小さくなる. これは対流の背が低くなったことと 対流プリュームの持つ温位差が小さくなったためである.


> 2次元非弾性系を用いた火星大気放射対流の数値計算
Odaka, Nakajima, Ishiwatari, Hayashi,   Nagare Multimedia 2001
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