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2次元非弾性系を用いた火星大気放射対流の数値計算

小高 正嗣 (東大数理科学), 中島 健介 (九大理), 石渡 正樹(北大地球環境), 林 祥介(北大理)



要旨

放射加熱によって駆動される火星大気対流の様子を調べるため, 2 次元非弾性系モデルを用いた対流の直接数値計算を行った. 数値モデルは火星大気下層の対流運動を陽に表現する空間分解能を持ち, これまでよく知られていなかった火星大気の対流運動の特徴を明らかにすることができる. 計算は大気中にダストのない場合と, 対流にともなう風によって地表からダストが巻き上げられると仮定した場合の 2 例を行った.

数値計算の結果, 火星大気の対流はその循環セルの最大スケールがそれぞれ鉛直に 10 km, 水平に 5〜6 km となるキローメータサイズの対流であることが明らかとなった. ダストのない場合の対流にともなう風の大きさは非常に強く, 鉛直風, 水平風ともに 20 m/sec を超える. モデルの水平風速から計算される日中の地表摩擦の大きさは, 実験によって得られている地表からのダスト巻き上げに必要な臨界値 (〜 0.04 Pa) に達する. この結果は, 火星大気大循環モデル (GCM) においてもキロメータサイズの対流の地表面摩擦への寄与を考慮すれば, 従来 GCM において計算不可能だったダストの自然な巻き上げと ダストストームの発生が計算可能となることを意味する.

対流にともなう風によってダストが巻き上げられる場合, ダストは 2 〜 3 時間で速やかに対流層内に広がり混合される. ダストが成層圏まで達すると対流の背は低くなり, 対流にともなう風は弱くなる. これはダストの太陽放射吸収にともなう加熱によって成層圏温度が上昇するためである. ダストの分布にともなう放射加熱の水平非一様性が 対流の循環パターンに与える影響は無視できる程度である.


    本文

  1. 研究の背景と目的
  2. 数値モデル
    1. モデルの概要
    2. 計算設定と実行環境
  3. 計算結果: ダストのない場合
    1. 平均場の日変化
    2. 対流場の様子
    3. 地表摩擦の大きさ
    4. 対流の強度
  4. 計算結果: ダストのある場合
    1. ダストの混合の様子
    2. 平均場の日変化
    3. 対流場の様子
  5. 議論
    1. 観測結果との比較
    2. GCM における対流の取り扱い
  6. まとめ
  7. 謝辞

    付録

  1. 数理モデルの詳細
    1. 大気モデル
    2. 乱流モデル
    3. ダストの輸送モデル
    4. 放射モデル
    5. 地表面熱収支モデル
  2. モデルの離散化
    1. 大気モデル
    2. 乱流モデル
    3. ダストの輸送モデル
    4. 放射モデル
    5. 地表面熱収支モデル
  3. 鉛直 1 次元放射対流モデル
    1. 数理モデルの詳細
    2. モデルの離散化, 計算設定と結果
  4. 付録図集
  5. 参考文献
  6. 著者連絡先


2次元非弾性系を用いた火星大気放射対流の数値計算
Odaka, Nakajima, Ishiwatari, Hayashi,   Nagare Multimedia 2001
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2001年10月19日投稿
2001年11月9日受理

 


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