2. 数値モデル up previous next
2.a. モデルの概要

系全体の枠組と仮定
系は大気と地面から構成される. 惑星の自転効果は考慮しない. 大気は理想気体とする. 大気組成は CO2 のみとし, その凝結はないとする. 地面物質の密度, 熱的性質は水平一様とする. 地形は考慮しない.

大気モデル
大気の流れ場と温度場は 2 次元の非弾性方程式系 (Ogura and Phillips, 1962) で記述する. 鉛直 1 次元モデルによって予想されているダストのない火星大気中の鉛直対流の厚さは, 放射平衡温度から計算される火星大気のスケールハイト (例えば Zurek et al., 1992 を参照) と同程度である (Flasar and Goody, 1976; Pollack et al., 1979). 非弾性方程式系には基本場の密度成層が考慮されているので, スケールハイト程度の厚さを持つような対流の記述を行うことができる.

乱流モデル
乱流パラメタリゼーション : モデル格子間隔以下の乱流による拡散は, Klemp and Wilhelmson (1978) のパラメタリゼーションにしたがって計算する.

地表面フラックスパラメタリゼーション: 地表面からの運動量と熱のフラックスはバルク法を用いて計算し, バルク係数は Louis (1979) のパラメタリゼーションにしたがい決める. ただし熱に対する乱流拡散係数 およびバルク係数は運動量に対するそれぞれの値に等しいとした. 地面の粗度長さは 1 cm (Sutton et al, 1978) とする.

これらの乱流モデルは地球大気の乱流を表現するために開発されたモデルである. 本研究では火星大気の乱流に対してもこれらの乱流モデルが適用できると仮定する.

ダストの輸送モデル
ダストの分布は重力沈降を考慮した移流拡散方程式で計算する. 沈降速度は Conrath (1975) の式で計算する. ただし沈降速度計算の際に用いるダストの粒径は一定 (0.4 μm) とする. 地表からのダストフラックスの値は White et al. (1997) の実験値を用いる.

放射モデル
CO2 の放射 は Goody のバンドモデルで計算する. 考慮する波長帯は赤外 (15 μm) と近赤外 (4.3, 2.7, 2.0 μm) バンド. 吸収強度と吸収線幅の値は Houghton (1986) の値を用いる.

ダストの放射 は δ-Eddington 近似で計算する. 考慮する波長帯は赤外 2 バンド (5-11.6, 20-200 μm) と可視 1 バンド (0.1-5 μm) バンドの取り方と消散効率, 1 次散乱アルベド, 非対称因子の値は Forget et al. (1999) に準じている.

地面モデル
地面の温度は鉛直 1 次元熱伝導方程式で計算する. 物性パラメータは Kieffer et al. (1977) の標準モデルの値を用いる.

2次元非弾性系を用いた火星大気放射対流の数値計算
Odaka, Nakajima, Ishiwatari, Hayashi,   Nagare Multimedia 2001
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