1.2 Rossby波の反射

水平方向に境界がある場合に、Rossby波とKelvin波の変換が起こらなければならないことは、次の海洋風成循環の例を考えるとわかる。

海洋の風成循環ではEkman層内で収束した水が高気圧性の渦を作り、それが Long Rossby波として西に伝播し、西岸で反射して、Short Rossby 波となって減衰消滅することで西岸強化が起こる。(Gill 1982)この時、西に伝播するRossby波は常に高気圧性であり、Ekman層で集められた余分な水を 伴っている。そのため、波数0の成分は0ではない。

ところが、この波が西岸で反射するとき、郡速度が逆向きの Short Rossby 波となるが、 この波群には波数0の成分は含まれない。つまり、波数0の成分はRossby 波としては反射することができず、境界に置き去りにされることになる。その受け入れ先として考えられるのがKelvin波である。

前に述べたように Kelvin 波は Rossby波の振動数と適合し、かつ波数0の成分含む波群の郡速度は0ではない。すなわち、波数0の成分を含んだ状態で伝播可能である。

このことは、海洋の熱塩循環にとってさらに重要な意味を持つ。熱塩循環においても、深層水が鉛直拡散によって密度が軽くなり、表層水となったあとの挙動は、上記風成循環の場合と同じである。そして、その水がKelvin波としてどこに運ばれるかということは、熱塩循環のパターンを本質的に決定することになる。

以下のページでは、このようなRossby波とKelvin波の変換過程を具体的に示し、その結果として定常状態の流れにどのような影響を及ぼすか調べる。

 

図2:Rossby波の分散関係とRossby波の西岸での反射