実験 S1570 における南北エネルギー輸送
実験 S1570 では潜熱エネルギー輸送量の増大が顕著である(図 1). 乾燥静的エネルギー輸送では緯度 45 度付近の輸送において平均子午 面循環成分が卓越する. これは, 中高緯度においては東西方向にも温度差が減少しており(図は示 さない)乾燥静的エネルギーの輸送に関しては擾乱による寄与が小さくなっ てしまったためであると想像される. しかし, この問題について正確に答えるためには擾乱構造の解析をしな ければならないであろう.
潜熱エネルギー輸送を見てみると赤道域においては全輸送量は相対的に小さく なる. 平均子午面循環で運び込んだ分は非定常擾乱によって運び出されキャンセルし てしまう. その結果, 熱帯域では蒸発と降水がつりあい熱帯域 の中で閉じてしまっているように見えている. 潜熱エネルギー輸送量が最大となる緯度 40度付近においては, 実験 S1380 の場合と同様非定常擾乱成分が卓越する. この緯度 40 度付近における擾乱の実態は, 赤道域で発生し 中糠緯度に移動してくる降水を伴う渦状の擾乱である (平衡状態における擾乱の特徴参照).
(a) (b)
図 1:
実験 S1570 における南北エネルギー輸送. (a): 乾燥静的エネルギー輸送. (b): 潜熱エネルギー輸送. 赤線が全輸送量, 青線が平均子午面循環による輸送, 緑線が停滞性擾乱による輸送, 薄茶線が移動性擾乱による輸送を表す. 単位はいずれも W.