はじめに 一様等方乱流における低圧力旋回渦の同定と可視化 一様等方乱流における低圧力旋回渦の同定と可視化 圧力断面極小旋回法 (1)

渦は、流体運動の最も基本的な運動形態のひとつで、 流れの力学機構や制御の考察には欠かせない概念である。 実際、カルマン渦、ハリケーン、航空機の翼端渦、壁乱流の流れ方向渦 等々、渦構造が流体力学的に重要なはたらきをしている現象は 枚挙に暇がない。 渦構造はしばしば管状の形態をとって現れ、 その運動や統計的性質は、上述のような様々な現象 の物理機構の解明の鍵を握っていると考えられる。 この管状渦構造を解析しそのダイナミックスを理解するためには、 流れの中に現われる渦を個別に 同定し、可視化できることが望ましい。 しかし、「渦とは何か?」とあらためて尋ねられると答えに窮してしまう。 流体力学の言葉で正確に渦の客観的な定義を与えるのはそう簡単ではない。 これに関しては、従来から、多くの研究者の努力が払われてきたが[1, 2, 3, 4]、 流体力学者の間でコンセンサスの得られている明確な定義はまだ確立されて いないようである。

最近、我々は圧力断面極小旋回法という渦の同定法を開発した [5, 6, 7]。 これは、旋回流の意味での渦の旋回中心軸(渦軸)と渦芯領域を定義す るものである。 本論文の目的は、この方法を一様等方乱流に適用し、渦の時空間構造を 時系列や多角度からの鳥瞰図のアニメーション画像解析により動的に理解 することにある。 以下、第2節では圧力断面極小法の考え方を簡単に紹介し、 一様等方乱流における渦軸と渦芯の構造を議論する。 第3節では他の代表的な渦の可視化法との詳細な比較を行う。 第4節はまとめである。


はじめに 一様等方乱流における低圧力旋回渦の同定と可視化 一様等方乱流における低圧力旋回渦の同定と可視化 圧力断面極小旋回法 (1)