圧力断面極小旋回法 (1) 一様等方乱流における低圧力旋回渦の同定と可視化 はじめに 圧力断面極小旋回法 (2)

渦を中心軸とその周囲の旋回領域として個別に定義することにより、 乱流中に現れる個々の渦がどのように発展を遂げるのかを追跡することが可能になる。 たとえば、一様等方乱流中の管状旋回渦は、 渦の伸張効果による断面の収縮が粘性による渦領域の拡散と競い合ってその太さや長さが決まると考えられる。 しかし、これは個々の渦の渦領域や渦軸の長さが個別に同定できて初めて検証可能になるものである。 渦軸を旋回運動の中心軸、渦芯領域を渦軸のまわりの旋回領域として与える圧力断面極小法は、 このような様々な物理的な側面の考察と検証を可能にするための手法として開発された。 圧力断面極小旋回法については、すでに、Miura and Kida [5]、Kida and Miura [6, 7]で導入しているので、ここでは、その考え方を簡単に紹介するにとどめる。

この方法の開発で、我々が特に心掛けたのは、(i) 定義に主観的な判断を含ないことと、(ii) 抽出の手続きを自動化すること、である。 前者は、従来の方法における(第3節で説明するような)渦芯領域を与えるしきい値の選択の恣意性を取り除くためであり、 後者は、十分発達した乱流のように渦で溢れているような流れの中で、 渦か否かをいちいち人間が判断したのではとてもそれら全ての解析をすることはできないからである。 この方法では、圧力極小をもたない渦 (たとえば、カルマンの回転円盤の解など粘性応力の卓越する旋回流 [8])は見落としてしまうが、 圧力が極小値をとる渦は全て機械的に抽出することができる。

旋回流の旋回中心部では、旋回する流体要素にはたらく遠心力につりあう形で、一般に、圧力が低くなる。ただし、これは、旋回軸に垂直な面内でのつりあいであって、軸に沿っての圧力の変動には特に制限はない。圧力がある面内で極小値をとる点を、ここでは、圧力の断面極小点と呼ぶことにする。このような点は、圧力の空間に関する1階微分と2階微分を用いて局所的に定義できる。

まず、圧力のヘシアン

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の3つの固有値を、λ(1), λ(2), λ(3)   (λ(1) ≧ λ(2)≧ λ(3) ) (対称行列であるから3つとも実数である)、それぞれに対応する単位固有ベクトルを、ε123とすると、圧力の断面極小には、少なくとも2つの固有値が正、

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という条件が必要である。


圧力断面極小旋回法 (1) 一様等方乱流における低圧力旋回渦の同定と可視化 はじめに 圧力断面極小旋回法 (2)