本論文では、圧力断面極小旋回法を一様等方乱流に適用し、管状渦の 空間構造と時間発展の様相を解析し、また、従来から提案されている 様々な渦の可視化法との比較を行った。 我々の方法は、複雑な流れの中の旋回渦の旋回軸と芯領域を客観的な基準で定義し、 自動的に抽出するものである。 この方法で同定される渦(低圧力旋回渦)は、細長い管状構造をしている。 渦軸は旋回渦の位置を明確に示し、また、渦芯の断面の径はコルモゴロフの 8倍程度である。
ここで取り上げた従来からの渦の定義法は、何らかの物理量の等値面で 渦構造を表現するものであったが、それらは全て、等値面のしきい値の 選択に客観性がないか、あるいは客観的に決まるしきい値に対しては、 空間を広く覆ってしまい、渦構造の抽出という目的にはかなわないもの であった。 Q、 Δあるいは λ2 の絶対値の大きなしきい値の等値面は、客観性は捨てることになるが、管 状旋回渦を比較的よく再現する。
圧力断面極小旋回法の長所のひとつは、旋回渦を個別に同定している点である。 全渦芯領域を表示したのではあまりに空間を埋め尽くして解析どころではな くなるが、図3 に示したように個別の解析も可能であるため、 管状渦の個々の特徴なども解析できる。
最後に、京大の酒井先生には筆者の未熟な技術的質問に懇切丁寧に助言を与えて いただいたこと、 また、東大の半場先生にはマルチメディア論文への投稿を勧めていただた ことに対し、謝意を表したい。 本研究の計算は、核融合科学研究所のスーパーコンピュータ NEC SX-3(平成9年12月まで)および SX-4(平成10年1月以降)で行った。