λ2定義 一様等方乱流における低圧力旋回渦の同定と可視化 Δ定義 まとめ

旋回渦の中心部で圧力が低くなる傾向に着目し、これを用いて渦領域を定義しようと いう考えは、すでに、Jeong and Hussain [4]に述べられている。 彼らは、粘性と非定常性が圧力分布を変え、旋回運動による圧力低下の特徴を 隠してしまう可能性があることを考慮し、これらの効果を取り除いた旋回運動の (圧力のヘシアンに代わる)指標として、

tex2html_wrap_inline737

を提案した。 この対称テンソルの第2固有値が負( λ2<0 )となる領域を渦芯とし、 これをλ2定義と呼ぶ。

図10 のアニメーションでは、  λ2の等値面をしきい値の小さい(負の) 方から大きい方へ変化させながら、渦軸と比較している。 これも、前2節の Q および  Δ と類似の挙動を示している。 特に、  λ2 = 0 の等値面を観察すると、やはり、広い空間領域を覆ってしまい、渦構造の特定 には使えない。 実際、Jeong and Hussain [18] では、  λ2 = 0 という客観的な基準ではなく、適当にしきい値を設定して可視化した渦構造を 論じている。 lambda.gif (16976 バイト)

図10:λ2 の等値面で、しきい値を漸増させたアニメーション (movie : AVI / QuickTime)

ところで、圧力断面極小法と  λ2定義は混同されやすいので、ここで、それらの違いを述べておく。 どちらの方法も、対称テンソルの第2固有値の符合で渦芯を定義しているという 点では同じであるが、対象とするテンソルが異なっている。 すなわち、前者では Pij 、後者では Tij を取り扱っている。 これら2つのテンソルの対角和は、符合を除いて一致するが、 両者は本質的に異なるものである。 試みに、両テンソルを等値する( Pij = -Tij )と、 Sij は移流拡散方程式

figure249

に従わざるを得ないことになってしまう。 (ただし、Jeong and Hussain [4]は、直感的な議論によって  Sij の方程式から非定常項と粘性項を消去はしたが、 PijTij を等値するということはやっていない。)


λ2定義 一様等方乱流における低圧力旋回渦の同定と可視化 Δ定義 まとめ