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特徴と見所は、

である。


標準的な成分

水蒸気混合比は 0.015である。凝結成分は主成分より重いが、浮力を逆転させる程ではない。

結果の特徴

ムービーこちら(コマ間隔は1時間)。

対流の構造は二階だて構造で特徴付けられる。その特徴は:

  • 凝結高度の下は、通常の熱対流と同じ。ここでは凝結を伴わない事とつじつまは合う。
  • 凝結高度より上では、集中した上昇流域と広い下降流域という非対称性がみられるなど、地球の雲対流と似ている。 ただし非対称性の程度は弱い(理由は凝結の潜熱効果が相対的に小さいため。)。

である。

すなわち凝結高度が対流層の途中にあると、
凝結高度を境にして雲対流と凝結を伴わない対流が分離する。

なお条件によっては、雲が同じ場所で次々に生成する現象が見られる。ムービーこちら(コマ間隔は30分)。

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図 8: 木星の雲対流のスナップショット。
領域:512km x 300 km。
左上:鉛直流(-20〜20m/s)、
右上:雨水混合比(log:10-8〜1)、
左下:温位偏差(基本場は断熱:-1〜1K)、
右下:水蒸気混合比(log:10-8〜1)。


可逆的対流

標準的成分のまま、雨の生成を除去する。

結果の特徴

熱力学的には凝結高度が明瞭な境界面である。すなわち:

  • 水は、下では気相・上では液相(雲水)が卓越する。
  • 温度は、凝結高度より上側では潜熱のために高温偏差である。

となっている。
にもかかわらず、鉛直流は凝結高度を何の支障もなく付抜けている。
つまり対流運動は凝結高度の存在を感じていない。

これは雲対流の構造の決定における凝結物重力分離の本質的重要性を示す。

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図 9: 雨の生成を抑止した場合の木星の雲対流。
領域:256km x 300 km。
左上:鉛直流(-50〜50m/s)、
右上:雲水混合比(0〜0.025)、
左下:温位偏差(基本場は断熱:-3〜3K)、
右下:水蒸気混合比(0〜0.025)。


凝結成分が多い場合

水蒸気混合比は 0.246 である。これは浮力が正である限界値 0.057 より大きいので、浮力は負となる。

結果の特徴

ムービーこちら(コマ間隔は1時間)。

対流は三階だて構造である。その特徴は:

  1. 最下層は通常の熱対流と同じ。凝結を伴わない。
  2. 凝結高度から、そのすぐ上には、非対流性の雲層が存在する。すなわち: 水平に広く雲が分布するが、そこでは強い鉛直運動は無い。
  3. 凝結高度よりずっと上では、上昇下降の非対称など、地球の雲対流と共通である。

である。

これより、強い分子量効果を受ける対流の特徴は、凝結高度と対流開始高度の分離である。

対流開始高度は、水蒸気混合比(上むきに減少)が十分少なくなり、分子量効果を含めた浮力が負でなくなる高度として決まる。

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図 10: 木星で水が極めて多い場合。
領域:512km x 300 km。
左上:鉛直流(-20〜20m/s)、
右上:雨水混合比(log:10-8〜1)、
左下:温位偏差(基本場は断熱:-2〜2K)、
右下:水蒸気混合比(log:10-8〜1)。


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