分子量効果の定量的扱い Index Previous

簡単のために、凝結物の質量と熱容量を 無視して考えると、 問題は、ある温度の飽和した気塊と、 それより高い温度のやはり飽和した気塊と、 どちらが密度が大きいか、に帰着される。

飽和した気塊の密度は、温度と圧力の関数として

\begin{displaymath}

\rho = \Dinv{R_{n}T} ( p + \frac{m_{v}-m_{n}}{m_{n}} p_{v}^{sat}) \end{displaymath} (11)

で与えられる。これを圧力を一定に保ちつつ温度で偏微分すると、

\begin{displaymath}

\DP[][p]{\rho}{T} = -\Dinv{R_{n} T^{2}} 

 [ p - \frac{m_{v}-m_{n}}{m_{n}}( T \frac{dp_{v}^{sat}}{dT} - p_{v}^{sat} ) ]\end{displaymath} (12)

となる。 これに先の Clausius Clapeyron の関係を用いると

\begin{displaymath}

\DP[][p]{\rho}{T} = - \Dinv{R_{n} T^{2}} 

 [ p - \frac{m_{v}-m_{n}}{m_{n}}(\frac{L}{R_{v}T}-1) p_{v}^{sat} ].\end{displaymath} (13)

これは飽和混合比 qvsat を用いて

\begin{displaymath}

\DP[][p]{\rho}{T} = -\frac{p - p_{v}^{sat}}{R_{n} T^{2}}

 [ ...

 ...{sat}) - \frac{L}{R_{v}T} (1-\frac{m_{n}}{m_{v}}) q_{v}^{sat} ]\end{displaymath} (14)

と書ける。

これより、凝結性成分の分子量が非凝結成分の分子量より小さい場合は、 高温の飽和気塊の平均分子量は小さくなるので、浮力は必ず正である。 一方、凝結性成分の分子量が非凝結成分の分子量より大きいと

\begin{displaymath}

q_{v}^{sat} \gt \frac{1+q_{v}^{sat}}{(1-\frac{m_{n}}{m_{v}})\frac{L}{R_{v}T}}\end{displaymath} (15)

である場合には、高温の飽和気塊の浮力は、温度が高いにもかかわらず、 その平均分子量が大きいために負となる。


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Kensuke Nakajima
1/31/1998