はじめに (3)
はじめに (3) 仮想粒子密度とボリューム・レンダリングによる流れの可視化 はじめに (2) はじめに (4)

 

特異点表示以外で情報を集約することが可能な可視化には仮想粒子のグループ化という手法が考えられる。

一例として仮想粒子をグループ化して追跡するリボンとかメッシュと呼ばれる方法がある。 図2に三角翼を過ぎる流れ場の単純な粒子追跡法とストリームリボンという方法での可視化例を示す。 図2aと2bを比較すると,翼面の渦構造がストリームリボンによって,より明確に示されていることがわかる。 

しかし,流れ面における三重点等の存在により位相構造が変化する場合,仮想粒子をグループ化した方法での可視化は破綻する。 様々な工夫[5]がなされているが決定的なものはない。   特異点や粒子のグループ化は結果として特定領域が抽出され,情報が圧縮されるという方法である。

 これに対し意図的に表示領域を限定し情報を圧縮する方法が考えられる。 すなわち,不要な情報を省くことにより特定領域を抜き出すという考えである。  適切な粒子の初期値(発生点)を選択する方法,表面流線や格子面流線といった粒子自身の移動を制限する方法などがその例である。 適切な発生点の選択の問題は重要である。 発生点は実験との比較を考えた場合,繁雑な可視化結果となってもそれ自身が意味を持つことが多い。 この場合は,発生位置は自明であるが,一般的には試行錯誤によって決定される。 結局,粒子の発生点を多くして,流れ場全体を対象とした可視化が行われる。 また非一様格子を用いた計算結果を可視化する場合は,不均質な発生点が原因で流れ場の構造を把握することが難しくなることがある。 逆に言えば,発生点を均質にするだけで流れの特徴が捉え易くなる場合もある。 発生点を均質にする方法としてLIC (Line Integral Convolution)[6]と呼ばれる画像イメージを基準とする一般のベクトル場を対象とした可視化法が提案されている。 但し,LICでは流れの可視化において定量性を考えた場合,必要とされる情報が欠落することがある。 発生点を工夫する方法で情報は圧縮できるが課題も多い。 そこで粒子追跡自身に工夫を施すのではなく,粒子の表示法を変えることで情報圧縮を試みる。

 

 

図2a 三角翼を過ぎる流れ(瞬間流線による可視化)

 

図2b 三角翼を過ぎる流れ(ストリームリボンによる可視化)

 

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