4. 考察とまとめ |
回転球面上の減衰性2次元乱流に関して, 高分解能のスペクトルモデルを用いて 数値実験を行った. 初期エネルギースペクトルの与える中心波数および球自転角速度の パラメターを段階的に変えて, 最終的にどのようなパターンが出現し, その ためにはどのような条件が必要なのかを吟味した. その結果以下のような知見が得られた.
- 極東風渦の形成について
球自転角速度が速い場合には, 初期値の与え方によらず極域に東風渦が出現した. 特に, Yoden and Yamada(1993)と異なり, 初期エネルギー を十分に高波数域に与えることによって, 非線形項が支配的となる乱流状態から スタートしてもこの結果には変わりがなかった. 従って, 極東風渦の形成は, 自転角速度が大きな場合の球面上の減衰性2次元乱流 の普遍的な特徴であると言うことができる.
この極東風渦の成因は, 極域の乱流状態により絶対渦度が混合されて一様化する ためと考えられるが, 中・低緯度からのRossby波伝播による運動量 輸送の効果の寄与も大きい可能性がある. どちらのメカニズムが主要なのか を見極めるには, さらなる解析が必要である.
- 縞状構造の出現について
球自転角速度が速い場合には, 中・低緯度域では 東風と西風が緯度方向に交互に並ぶ帯状縞構造が得られたが, この縞状構造 が出現するためには, 球自転角速度が速いことだけではなく, 初期エネルギーを Rhinesスケールより十分小さいスケールに与える必要があることが分かった. これは, エネルギーの逆カスケードによりエネルギーが大きなスケールに溜る 際に東西-南北方向の非一様性を起すためには, 非線形項の力学が卓越する 十分小さいスケール(Rhinesスケールより小さいスケール)に初期エネルギーが注入 されている必要があるためと考えられる.
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