水平温度差によって引き起こされる対流セルのうち, どの程度の水平スケールまでのものが 鉛直温度差による対流に打ち勝つことができるかを, レイリー数の関係として表したのが右図である. 図中の曲線より右下の領域では, プレートの存在によって与えられた温度差が引き起こす流れの速度が 温度差がないときに形成される流れの速度より大きい (uh >u,u'). すなわち, 水平温度差による対流が鉛直対流に打ち勝つことができて, その水平スケールの対流セルが形成される可能性があることを示している. 対照的に左上の領域では, プレートの存在によって形成された温度差が引き起こす 流れは鉛直対流としての流れよりも小さい (uh < u,u'). 水平温度差による対流が鉛直対流に打ち勝つことができず, その水平スケールの対流セルが形成されえないことを示す. 図によると uh > u,u' を 与える水平スケールは, Ra=104 の場合 Lx=2 まで, Ra=105 の場合 Lx=10 まで, Ra=106 の場合 Lx=30 までである. すなわち, Ra=104 ではアスペクト比 2 まで, Ra=105 ではアスペクト比 10 まで, Ra=106ではアスペクト比 30 までの対流セルが 形成される可能性があることになる. Lx を大陸の水平スケールに読みかえれば, 図8右下の領域 (uh > u,u')は 流体層上部にあるプレートの大きさと 同程度のアスペクト比をもつ対流セルが 形成可能であることを示すことになる. すなわち上昇流がプレートの中央に存在する プレートの外側まで延びる横長な対流セルが形成されうる. これに対して, 左上の領域 (uh < u,u')では 与えられたレイリー数に対して トーン領域までの大きさをもつ対流セルが形成可能であることを示す. この場合は, プレートの下からプレートの外側へ延びる対流セルの上昇流が プレートの中央ではなくプレートの端寄りに形成されることになる.
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図:レイリー数に対する対流セルの縦横比の限界. 与えられたレイリー数に対して曲線で示される水平スケールまで の対流セルが, 鉛直温度差による対流運動の振幅を越えることが 可能であることを示している. (10) の見積もりの際には a=1.5 を与えた. |