特集 ながれの電子出版について/城之内 忠正

しかし,当時のコンピュータを使える人は限られていたので,情報が広く伝わり,誰でも利用できるというわけには行きませんでした.その結果,紙メディアの時代が現在まで続いてきているわけです.90年代半ばに入るとWorld Wide Webの流行でインターネットが急速に広がり,パソコンの低価格化と使いやすさの向上によって,インターネット端末としてのパソコンが普及しました.誰でも比較的簡単に扱えるパソコンがインターネットに繋がったために,情報が世界を駆け巡るようになりました.ネットワーク化されたことの意味は,コンピュータのデジタルデータ処理機能を使って,ロバストな通信システムを実現したことにあります.つまり,汎用的な道具であったコンピュータを通信に使った結果,情報を記録し,編集し,流通させるデジタルメディアを生み出したわけです.さらに,このメディアは文字だけでなく音声や画像や動画やプログラムまでもデジタルデータとして扱えるものとなっています.つまり,情報なら何でも扱えるメディアとしてインターネットが登場したわけであり,今はそのメディアの上に,人間の文化をデジタル情報として再構築しつつあるわけです.

さらに,出版にほとんど経費がかからず,紙数の制約も無く,文化の普及活動が出来るという意味において,インターネット上の電子出版は必然のように感じます.実際,いくつかの学術学会誌はWebへ移行し印刷物は配布しなくなりました.そういう状況にあるため,「ながれ」においても真剣に電子出版の方向を考えておく必要があります.