特集 ながれマルチメディア ―― 学会電子化への実験/酒井 敏

4.情報を売る学会から、情報発信のステージを提供する学会へ

原著論文をネットワーク配信することは、読者にとっては簡単に情報が得られて便利になりますし、著者にとっては、より多くの人に読んでもらえるようになるので、基本的にはよいことずくめです。しかし、その配信コストはいったい誰が払うべきなのでしょうか? 

先にも書いたように、読者に負担してもらうべく、アクセスに制限をつければ、読者に負担がかかるだけでなく、検索ロボットが入れなくなりますので、検索にかからなくなります。つまり、そのような制限をつけたら最後、アクセスは劇的に減ってしまうのです。そして、そのような「人に読んでもらえない雑誌」に投稿したいという著者もいなくなります。 

さらに、インターネットが普及するにつれて、さまざまな情報がタダで手に入る時代になってきましたから、もともと営利目的ではない原著論文へのアクセスに課金するというのは、世の中の流れから見ても、受け入れられるものではありません。このように、ネットワーク時代には「情報を売る」事で学会を維持することは困難なのです。