特集 ながれマルチメディア ―― 学会電子化への実験/酒井 敏

では、我々が学会に対して会費を支払うのは、情報を得るためだけでしょうか?年会に参加して自分の研究を発表したり、学会誌に投稿して自分が得た知識を広める事も、学会に所属する動機の一つです。つまり、学会はこれまでも会員に対して情報の提供でだけではなく、会員の情報発信の手助けという重要な役割を果たしているわけです。 

これまで、情報を流通させるためには、基本的に紙に印刷して郵送しなければならず、このコストが学会予算のかなりの部分を占めています。そして、会員から見れば会費を払わないとこの情報がもらえないのですから、当然、情報に対して会費を出しているような意識になります。

 しかし、これからの学会はこの意識を180度転換して、学会は情報発信のためのステージを用意し、会員はそれを使うために学会費を払う、という構造に変えないと学会の存在基盤が失われてしまいます。 そのために、学会はこれまでのように情報の受け手としての会員にサービスして会費を受け取るのではなく、情報の発信者としての会員に会費を支払ってもらえるだけのサービスすることを、真剣に考えていかなければいけないと思います。