はじめに (2) -目的 目次 はじめに (1) -背景 モデル

しかしながらなぜらせん状の対流が出現するようになるかということの 物理的な説明はいまだ満足に与えられていない. そこで本研究ではこのらせん状の対流を物理的に解釈することを試みる.

本研究では, 3 次元的な回転球殻対流を直接扱うのでなく, その簡単なモデルとして研究されてきている 上下境界面の傾いた回転円筒内の対流モデルを用いる (e.g. Busse 1986, 竹広ら 1998). 高速回転下ではテイラープラウドマンの定理により 回転軸方向に伸びた一様な柱状の運動が卓越する. このような 2 次元的な対流に上下の境界面の傾きの影響, いわゆる地形性β効果を考慮したモデルである.

地形性β効果に支配される典型的な流体運動は 「地形性ロスビー波」である. 上下の境界面のために, 2 次元的な渦柱が動径方向に移動すると伸縮させられてしまうために生じる波動である. 我々はこのロスビー波を用いてらせん状の対流構造を物理的に解釈することを行う. ロスビー波を用いた説明により, どこで対流運動が励起されどのように波として伝播し散逸しているかといった流体力学的構造がわかりやすくなると期待される.

以下, 我々が用いる回転円筒モデルを説明し, 線形安定性計算を行う. その結果, 円筒モデルでも球殻モデルと同じようにらせん状の対流構造が出現することを示す. この対流構造をロスビー波の伝播性質で解釈することを行う. さらに非線形計算の結果の例を示し, 平均流の生成がロスビー波の性質と整合的であることを述べる.

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図 : 回転円筒モデル


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