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竹広 真一・入江 正憲(九大理)
高速回転する球および球殻内に生じる 動径方向にらせん状に広がった柱状の熱対流の力学的な理解のために, 高速回転円筒モデル内の 2 次元熱対流を地形性ロスビー波の性質を通じて考察した. このモデルは球の幾何学的形状を模した上下境界面を持っており, 系の回転はこの境界面の地形性β効果を通じて 回転軸方向にそろった 2 次元的な流れに影響を与える.
静止状態に対する線形安定性を調べた結果, プランドル数が小さい場合に 動径方向にらせん状に広がった対流構造が臨界状態付近で出現することが示される. 対流構造はプランドル数が大きくなるにつれて内側領域へと集中するようになる. このようならせん状の構造は, 外側と比較して境界面の傾きが小さく対流運動が生じやすい内側領域から ロスビー波が外向きに伝播していることに対応している. ロスビー波の分散関係を用いて計算された 流れのパターンは対流のらせん状構造と良く一致する. プランドル数が大きくなると粘性の効果が強まり 内側領域の対流運動がロスビー波として伝わることができなくなることがわかる. 求められた対流構造の運動エネルギー収支においても, 内側で生成された運動エネルギーがロスビー波により運ばれて 対流層全体で粘性により散逸していることが確認される.
有限振幅対流の時間積分計算の結果には らせん状の対流に加えて外側で回転と同じ向き, 内側で回転と逆向きの平均流が見られる. この平均流生成もロスビー波の性質により定性的に説明できる. ロスビー波は回転と同じ向きの運動量を持っているので, 波が放射される内側領域では運動量が失われ回転と逆向きの平均流が生成される. これに対してロスビー波が集まり散逸する外側領域では 運動量が増加し回転と同じ向きの平均流が引き起こされる.
高速回転する球および球殻内に生じるらせん状対流も 回転円筒系と同じようにロスビー波の性質で説明することができると期待される.
2001年9月17日投稿 2001年11月12日受理 |