有限振幅計算 目次 ロスビー波による解釈 -(3) エネルギー収支 まとめ
図: 有限振幅対流の計算結果. P=0.1, E=10-4, R=1.3x105. 上段が流線関数, 下段が流線のx方向平均からのずれと平均流.

p1psi.gif (?? バイト)
p1pd.gif (?? バイト)

上図はレイリー数を臨界値よりも大きくした場合に 発生する対流の構造を時間積分により計算したものである (計算方法の詳細は付録:有限振幅計算詳細).

流線関数を示した上図では等値線が横に伸びており, 強い x 方向の平均流が引き起こされていることがわかる. そのことをはっきりと示すために x 平均とそれからのずれで 表現したのが下図である. 上側領域で x 正方向(東向き), 下側領域で x 負方向の平均流が存在している. 擾乱流線関数の図には線形計算に見られたようならせん状の構造が見られる.

この平均流の生成は傾いた対流セルによる運動量輸送により説明することが多い. すなわち, 速度の x および z 成分 u, w の相関によって生じるレイノルズストレス $\overline{uw}$ が正なので, x の正の向きの運動量が上向きに輸送されて 平均流が引き起こされるという説明である.

しかしながらこの平均流生成も次のようにロスビー波の性質を通して理解することができる.

  • 地形性ロスビー波の位相速度が x 正方向であり, ロスビー波の持つ運動量も同じ向きである (付録:ロスビー波詳細).
  • これまでに見てきたように ロスビー波は下側領域で励起され上に向かって伝播し粘性で散逸している.
  • 下側領域ではロスビー波が出ていくので運動量が失われる. 結果として負の運動量が残り負の向きの平均流が生じる.
  • 上側領域ではロスビー波が入って来てつぶれるので 正の向きの運動量がたまることになり正の向きの平均流が生じる.


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