ロスビー波による解釈 -(3) エネルギー収支 目次 ロスビー波による解釈 -(2) 粘性の効果 有限振幅計算
図: 1 波長平均した運動エネルギー収支. 緑線が浮力による運動エネルギーの生成, 青線がロスビー波による運動エネルギー輸送の発散収束, 赤線が粘性による運動エネルギーの散逸である.

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ロスビー波がどこで励起され, 伝播し, 散逸しているかを確かめるべく, 臨界状態付近の対流構造に対して運動エネルギー収支を計算した.

線形化した渦度方程式に $\psi$ をかけて x 方向に平均をとると次のような式が得られる (詳細は付録:運動エネルギーの式).

\begin{displaymath}
\DP{}{t}\left(\frac{1}{2}\overline{\vert\Dgrad\psi\vert^2}\...
...R\overline{\theta\DP{\psi}{x}} -P\overline{(\Dlapla\psi)^2}.
\end{displaymath} (10)

ここで上線は x 方向の 1 波長平均を表している. 左辺第 1 項が運動エネルギーの時間変化, 第 2 項がロスビー波の伝播に伴う運動エネルギーの収束, 第 3 項は粘性による運動エネルギー輸送の収束である. 右辺第 1 項は浮力による運動エネルギーの生成, 第 2 項が粘性による運動エネルギーの散逸に対応している.

臨界状態付近の対流構造に対して この式の各項の強さの z 分布を描いたのが 上図である. 臨界状態に近いので運動エネルギーの時間変化項は無視できる. 右辺第 3 項の粘性による運動エネルギー輸送の収束は実際に計算してみると 粘性散逸に比較して十分に小さいので描いていない.

  • プランドル数が小さい場合
    ロスビー波によるエネルギー輸送が十分に大きい. 下で発散, 上で収束 → 上向きにエネルギー輸送
    浮力によるエネルギー生成は領域下側に集中.
    粘性散逸は領域上側までのびている.
  • プランドル数が大きい場合
    ロスビー波によるエネルギー輸送が非常に小さい.
    浮力によるエネルギー生成と粘性散逸が領域下側でほぼバランスしている.

このことから, 運動が引き起こされている様子が以下のようにはっきりとわかる.

  • プランドル数が小さい場合
    下側で運動が引き起こされる → ロスビー波として上方へ伝播 → 粘性で散逸.
  • プランドル数が大きい場合
    下側で運動が引き起こされる → その場で粘性散逸.

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