ロスビー波がどこで励起され, 伝播し, 散逸しているかを確かめるべく,
臨界状態付近の対流構造に対して運動エネルギー収支を計算した.
線形化した渦度方程式に
をかけて
x 方向に平均をとると次のような式が得られる
(詳細は付録:運動エネルギーの式).
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ここで上線は x 方向の 1 波長平均を表している.
左辺第 1 項が運動エネルギーの時間変化,
第 2 項がロスビー波の伝播に伴う運動エネルギーの収束,
第 3 項は粘性による運動エネルギー輸送の収束である.
右辺第 1 項は浮力による運動エネルギーの生成,
第 2 項が粘性による運動エネルギーの散逸に対応している.
臨界状態付近の対流構造に対して
この式の各項の強さの z 分布を描いたのが
上図である.
臨界状態に近いので運動エネルギーの時間変化項は無視できる.
右辺第 3 項の粘性による運動エネルギー輸送の収束は実際に計算してみると
粘性散逸に比較して十分に小さいので描いていない.
- プランドル数が小さい場合
ロスビー波によるエネルギー輸送が十分に大きい.
下で発散, 上で収束 → 上向きにエネルギー輸送
浮力によるエネルギー生成は領域下側に集中.
粘性散逸は領域上側までのびている.
- プランドル数が大きい場合
ロスビー波によるエネルギー輸送が非常に小さい.
浮力によるエネルギー生成と粘性散逸が領域下側でほぼバランスしている.
このことから, 運動が引き起こされている様子が以下のようにはっきりとわかる.
- プランドル数が小さい場合
下側で運動が引き起こされる → ロスビー波として上方へ伝播 → 粘性で散逸.
- プランドル数が大きい場合
下側で運動が引き起こされる → その場で粘性散逸.
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