以上, 上下境界面の形が球形である回転円筒中の 2 次元対流の 性質をロスビー波の性質を通じて解釈した. 臨界状態付近で現れる対流構造は高速回転する球殻中の対流と同じような性質を持つものであった. プランドル数が大きければ Busse の描像に相当する 細いテイラーカラム型の対流が境界面の傾きの緩やかな下側領域に生じる. プランドル数が小さくなるにつれて上側領域に広がりらせん状に伸びた構造となる. このらせん状の構造はロスビー波の伝播性質に対応している. 対流の生じやすい下側領域にて励起されたロスビー波が 上側に伝播しつつ粘性で散逸している状況となっている. 分散関係を用いて予測した流れのパターンと対流の構造は良く対応していた. 対流構造を運動エネルギー収支解析することでも この流れの生成の仕組みが確かめられた. 有限振幅対流に伴って生じる平均流の定性的な説明も, 上のシナリオとロスビー波の運動量をあわせて考えることで可能である. |
回転円筒系での対流構造のロスビー波による解釈は,
そのまま高速回転する球あるいは球殻内の
2 次元的な対流にもそのまま当てはめることができるだろう.
すなわち
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図 : 高速回転する球(殻)内の 2 次元対流の生成の仕組み |
ここで述べたロスビー波による対流運動の解釈は, あくまで回転球殻内の対流運動のとある側面に対して適用できるものであり, 説明しきれない他のいろいろな流れや温度場があることに注意されたい. 例えば対流により引き起こされる平均帯状流を考える際には ロスビー波による平均帯状流生成だけでなく 他の要因も考慮する必要がある. 例えば熱輸送に伴う平均温度分布にバランスするような温度風が卓越 するかも知れない(e.g. Takehiro and Hayashi 1999). また, プランドル数をより小さくすると, らせん状対流構造とは異なる 赤道外側境界付近に捕捉された対流構造が臨界状態として出現するようになる (Zhang and Busse 1987). 我々の回転円筒系での計算でもプランドル数をより小さくすると, 上側に振幅の偏った対流構造が臨界状態として出現する (付録:線形安定性詳細での P=0.1,E=10-3 の場合). しかしながらこのモードが 3 次元回転球殻系の赤道捕捉モードと 対応するものかどうかは明らかではなく, 回転の効果の強い領域で振幅が強くなるのがなぜなのか, といったことをロスビー波の性質で説明できるかどうかは今後の研究課題である.
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