1. はじめに
二次元層流境界層の遷移過程に出現する乱流斑点の構造(付録1)は普遍的(Wygnanski et al.1976)であり、乱流斑点が間欠的に発生している境界層を熱線で計測すると特徴的なスパイク波形が観察される。そのせいか、三次元境界層の遷移過程においても、高周波変動波形が間欠的に現れたというだけでこれを乱流斑点と呼ぶ場合(Malik et al. 1981)がある。乱流斑点の定義は必ずしも明確ではないから、層流中に乱流の塊が局所的に存在するという意味ではそのように呼ぶことも差し支えないかもしれない。しかし、二次元境界層と三次元境界層では、そこに介在する不安定機構が本質的に異なるから、例え三次元境界層中で局所乱流塊を観察したとしても、それはいわゆる乱流斑点とは内部の渦構造や成長機構などが全く異なった現象である可能性もある。本研究は典型的な三次元境界層の一つである回転円盤境界層中に強い撹乱を与えたときの遷移過程、および平板境界層中の乱流斑点との相違点を明らかにすることを目的とする。特に、回転円盤境界層では横流れ(C-F)不安定と流線曲率(S-C)不安定の二つの不安定性(Itoh 1998 a,b)が微小撹乱の成長に寄与することが知られている(付録2)が、局所撹乱の成長と乱流遷移がこれらの不安定性とどのような関連をもつのかに注目した。