周辺乱流場の巻き取りによって、秩序渦はランダムな方向を向いていた微細渦構造 を周方向に揃える。その結果、渦核の周辺では 成分を持つ微小 撹乱が増幅される。これは秩序渦の差分回転によるものであり、 RDTの描像とよく一致する。 秩序渦が2回転するとRDTの適用限界を越え、フィラメント が渦輪を形成し、延長されて微細化が促進されると、 渦の間隔も狭まる様子が渦構造の可視化により観察された。
渦核外部では平均流の持つエネルギーは減少し、それにつれて撹乱エネルギーが増 大することを統計的に確かめた。これは秩序渦の持つ大規模構造のエネルギーがカ スケードし、フィラメントを通して効率よくエネルギーを散逸していると言える。
秩序渦内部では異方性のある撹乱の発生を確認した。 半径方向、周方向の変動 は増幅され、 方向の撹乱の増幅は抑制される様子を統計的に捉えられた。 これは渦核内に発生する渦波を捉えたものであり、軸対称性と 非軸対称性のモードを併せ持つ。 これらは方向に長波長の成分を持ち、時間的に増加する。 その結果、 秩序渦の大規模構造を大きく変化し、後にこの構造を崩壊させる一因となる。
このような非線形相互作用の発生は秩序渦が初期値に持つ循環の大きさ に依存する。循環が強い(や)ならば、秩序渦の差分回転によってフィラメント構造が生成され、上記の様な渦の変形が見られる。 一方が小さい()と計算開始直後から秩序渦と乱流場との非線 形相互作用が発生し、大規模渦構造が線形過程を経ずに崩壊することがわかった。