E 順圧不安定
基本流が、方向の波数の擾乱に対して安定であることを証明する。なお、この章では証明を見易くするため、波数をと置き換えている。また、粘性の影響を明確にするため、動粘性係数(本研究では1)を表示している。
順圧成分について考えるので、基礎方程式の(1),(2),(5)において微分を0とすると
ただし、
ここで、流線関数を次のように定義する。
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(60) |
また、渦度を次で定義する。
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(61) |
式(57),(58)より、渦度方程式は
式(59),(61)を用いてのみで表すと次のようになる。
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(62) |
渦度方程式(62)は次のを定常解として持つ。
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(63) |
この基本流に摂動を与えた場合、摂動方程式は線形化して次のようになる。
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(64) |
ここで、領域積分の記号を次で定める。
式(64)の両辺にを掛けて領域積分し、部分積分を行うと擾乱のエネルギーに関する次式を得る。
また、式(64)の両辺にを掛けて同様の操作を行うと擾乱のエンストロフィーに関する次式を得る。
ここで(63)より
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(67) |
よって、次の関係が得られる。
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(68) |
ここでを方向の波数の摂動としてスペクトル展開する。
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(69) |
すると、は次のように書ける。
同様にしてや(68)の右辺第1項は次のようになる。
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(71) |
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(72) |
(70),(71),(72)を(68)に代入し、さらに
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(73) |
を導入すると、次の式が得られる。
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(74) |
さて、基本流が線形不安定であるとき、(64)は発達する固有モードを持つ。その発達率を用いて、の時間変化は
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(75) |
と表せる。(75)を(74)に代入すれば、
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(76) |
を得る。したがって、擾乱が発達するための必要条件は、「かつが成立」となる。
- i) の擾乱
-
より、(76)のの係数は全てのについて正である。したがって、は全て0になり、擾乱は発達しない。
- ii) の擾乱
- ,の場合にのみ必要条件が満たされる。これは初期擾乱がモード単独であることを意味しているが、このとき(64)は左辺第2項の括弧内が0となり、
のように拡散方程式の形になるため、擾乱は発達しない。
i),ii)より、基本流は方向の波数の擾乱に対して安定である。
この結果より、基本流は方向の波数の擾乱に対して安定である。波数の表記を元に戻すと、基本流はの擾乱に対して安定である。本研究ではなのでより、方向の波数の擾乱に対して安定となる。
SAITO Naoaki
2008-03-07