TI2006 の議論を拡張し, 赤道β平面浅水系の線形シアー流中で発生する 最大不安定モード以外の不安定モードに対する 解釈を与え, 連続モードおよび中立モードの振る舞い に関する考察を加えた. 得られた結果は以下の通りである.
東西対称な構造を持つ不安定モードをもたらす共鳴するモードの組み合せは, 以下の通りである.
ここで, n は不安定モードの構造を表現するエルミート多項式の次数である. 最低次(n=0)の不安定モードはいわゆる慣性不安定モードであるが, 高次(n≥1)の東西対称不安定モードは慣性不安定とは異なる種類の不安定モードと考えられる.
上記の結果 (3) で論じた分散曲線の交差と似たものが 金星大気を想定した条件下で不安定モードを求めた Iga and Matsuda (2005) の結果でも 見られる. 彼らが得た分散曲線図 ( Iga and Matsuda (2005) の Fig.14) においても, 重力波モードの分散曲線に重なって 交差を起こす分散曲線が存在している. これらは, 本論文で得られた交差モードに対応すると 想像される. Iga and Matsuda (2005) が得た 分散曲線が交差を起こすモードは, 中緯度の重力波的な 構造を持つのであろう.
上記の結果 (2) は, 中緯度の f平面系においても 最低次の慣性不安定モードと高次の不安定モードとは別種の 不安定であることを示唆する. f平面においては, 最低次の不安定モードは 東進慣性重力波モードと西進慣性重力波モードとの共鳴によりもたらされ, 高次の不安定モードは 東進慣性重力波モードと連続モードとの共鳴により, もたらされると想像される. 本論文では扱わなかったけれども, f平面で我々と同様の調査を行えば, これらの想像を確認することができるであろう.