3. 実験結果 (Kuo スキーム) | [prev] [index] [next] |
Kuo スキームを用いた実験における, 赤道上の放射冷却率と凝結加熱率の鉛直分布, 及び降水量の東西時間平均図を示す.
降水構造の詳細を調べるのに先だって, 放射冷却パラメタの変更が, 期待される凝結加熱の鉛直分布をもたらしているか否かを確認する必要がある. 図3.1 は Kuo スキームを用いた実験における放射冷却率 (左図), および, 凝結加熱率 (右図) の東西時間平均を示している. 長波放射スキームの乾燥空気バンドの吸収係数を小さくすると, 対流圏上部での放射冷却率が大きくなっており, また期待した通りに, 凝結加熱率のピークも対流圏上部に移動している.
これらの実験のうち, 対流圏下層で凝結加熱率の最大となる実験 kuo-a(赤線) を 下層冷却実験, 対流圏上層で凝結加熱率の最大となる実験 kuo-c (青線) を 上層冷却実験 と呼び, 後の小節にて詳細に比較検討する. なお, 実験 kuo-d (水色線) は実験 kuo-c (青線)よりもさらに上層での凝結加熱が強いが, 降水の東西平均の緯度分布 (図3.3) からも示唆されている通り, 平均循環場が他の実験と大きく異なってしまっているので, kuo-d を詳細な比較の対象として選択しなかった.
図3.1: Kuo スキームを用いた実験での 赤道上における放射冷却率 (左図), 凝結加熱率 (右図) の時間東西平均 (単位は [K s-1]). 時間平均は 1000〜1700 日で行っている. 長波放射スキームの乾燥大気バンドの吸収係数は, kuo-a (赤), kuo-con (黒), kuo-b (黄緑), kuo-c (青), kuo-d (水) の順に小さくしている. |
図3.2 は Kuo スキームを用いた実験の赤道上の時間東西平均東西風の鉛直分布である. 下層冷却実験(kuo-a)では最下層から対流圏中層にかけて東風が次第に強まり, 大気凝結層下層に対応する高度2[km](σ=0.8)では 5 [m/s]程度になっている. それに対して, 上層冷却実験(kuo-c)では, 最下層から対流圏中層にかけての平均風はずっと弱い.
図3.2: Kuo スキームを用いた実験での 赤道上の東西風の時間東西平均 (単位は [m s-1]). 時間平均は 1000〜1700 日で行っている. 線の意味は図3.1 に同じ. |
図3.3 は Kuo スキームを用いた実験の降水の東西平均の緯度分布である. 実験 kuo-d (水色線) 以外の実験においては, 降水量の最大値は南北緯度約 7 度にあり, 赤道上では極小値をとる (double ITCZ 構造). 一方, 実験 kuo-d での降水量は赤道上で最大値をとる (single ITCZ 構造). ここには示さないが, 上の相違に伴って, kuo-d の低緯度の子午面循環や東西風の分布などは, 他の実験と大きく異なっている.
図3.3: Kuo スキームを用いた実験での 降水の東西時間平均の緯度分布 (単位は [kg m-2 s-1]). 時間平均は 1000〜1700 日で行っている. 線の意味は図3.1 に同じ. |
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