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要旨
大気大循環モデルで表現される 赤道域降水構造の発現に対する放射冷却率鉛直分布の影響を, 簡略な大気大循環モデルを用いての水惑星実験により調べた. ここでは計算結果を動画表現と 降水域に準拠したコンポジット循環解析とによって示す. 大気大循環モデル中の 降水分布パターンの相違を発生させる要因のひとつとして, 凝結加熱率の鉛直分布の差異が挙げられる. Numaguti and Hayashi (1991) は, 水惑星実験を行い, 格子点スケールの東進降水構造の維持に wave-CISK (第二種対流不安定) の力学が関与すると主張した. wave-CISK の力学の発現には, 凝結加熱の鉛直分布が大きく影響する. GCM で見られる格子点スケールの東進降水構造が wave-CISK の力学によるものであるならば, 凝結加熱の鉛直分布が wave-CISK の力学とつじつまがあっているときに それらはより明瞭に現れるだろう. この予想に基づいて, ここでは, 長波放射スキームの吸収係数を調節することにより 放射冷却率の鉛直分布を変更することで, 結果として凝結加熱率分布を変更する実験を行った. 積雲パラメタリゼーションに Kuo スキームを用いた場合には 期待された降水特性の変化が得られた. 放射冷却率が対流圏上層で最大値を持つ実験では, 赤道上での格子点スケールの降水構造の東進が顕著になり, 対応して wave-CISK の示唆する位相の西傾構造も明瞭に見られた. これに対し, 放射冷却率が対流圏下層で最大値を持つ実験では, 降水構造の西進が顕著になり, 位相の傾きは見られず, CIFK(第一種条件付き不安定)の示唆する構造となっていた. 積雲パラメタリゼーションに対流調節スキームを用いた場合, 長波放射吸収係数を変更しても 期待したような大きな凝結加熱分布の変化が起こらず, 赤道上の格子点スケールの降水域の構造には顕著な変化が見られなかった. |
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2012 年 2 月 19 日 投稿