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水惑星実験における赤道域降水活動の
放射冷却率鉛直分布依存性

中島 健介 (九大・理) 山田 由貴子 (北大・理) 石渡 正樹 (北大・理) 林 祥介 (神戸大・理)

要旨

大気大循環モデルで表現される 赤道域降水構造の発現に対する放射冷却率鉛直分布の影響を, 簡略な大気大循環モデルを用いての水惑星実験により調べた. ここでは計算結果を動画表現と 降水域に準拠したコンポジット循環解析とによって示す.

大気大循環モデル中の 降水分布パターンの相違を発生させる要因のひとつとして, 凝結加熱率の鉛直分布の差異が挙げられる. Numaguti and Hayashi (1991) は, 水惑星実験を行い, 格子点スケールの東進降水構造の維持に wave-CISK (第二種対流不安定) の力学が関与すると主張した. wave-CISK の力学の発現には, 凝結加熱の鉛直分布が大きく影響する. GCM で見られる格子点スケールの東進降水構造が wave-CISK の力学によるものであるならば, 凝結加熱の鉛直分布が wave-CISK の力学とつじつまがあっているときに それらはより明瞭に現れるだろう. この予想に基づいて, ここでは, 長波放射スキームの吸収係数を調節することにより 放射冷却率の鉛直分布を変更することで, 結果として凝結加熱率分布を変更する実験を行った.

積雲パラメタリゼーションに Kuo スキームを用いた場合には 期待された降水特性の変化が得られた. 放射冷却率が対流圏上層で最大値を持つ実験では, 赤道上での格子点スケールの降水構造の東進が顕著になり, 対応して wave-CISK の示唆する位相の西傾構造も明瞭に見られた. これに対し, 放射冷却率が対流圏下層で最大値を持つ実験では, 降水構造の西進が顕著になり, 位相の傾きは見られず, CIFK(第一種条件付き不安定)の示唆する構造となっていた. 積雲パラメタリゼーションに対流調節スキームを用いた場合, 長波放射吸収係数を変更しても 期待したような大きな凝結加熱分布の変化が起こらず, 赤道上の格子点スケールの降水域の構造には顕著な変化が見られなかった.


本文:

  1. はじめに
  2. モデルと実験設定
  3. 実験結果 (Kuo スキーム)
    1. 東西時間平均構造
    2. 赤道降水量の経度時間断面・スペクトル
    3. 赤道域での降水と循環の時間変動
    4. 降水活動にともなう循環のコンポジット構造
  4. 実験結果 (湿潤対流調節スキーム)
    1. 東西時間平均構造
    2. 赤道降水量の経度時間断面・スペクトル
    3. 赤道域での降水と循環の時間変動
    4. 降水活動にともなう循環のコンポジット構造
  5. 議論とまとめ

付録:

  1. wave-CISK についての簡単な解説
    1. 赤道波における wave-CISK
    2. 伝播性増幅解の発現機構
    3. 上昇流・下降流に伴う加熱の非対称性の効果
  2. 解析手法
    1. コンポジット解析
    2. 時空間スペクトル解析
  3. Numaguti and Hayashi (1991) との結果比較
  4. 用いた積雲パラメタリゼーションの簡単な解説
    1. Kuoスキーム
    2. 湿潤対流調節スキーム

謝辞・引用文献・著者連絡先:

2012 年 2 月 19 日 投稿