付録 C. Numaguti and Hayashi (1991) との結果比較 [prev] [index] [next]

付録 C. Numaguti and Hayashi (1991) との結果比較

ここでは, 同設定での過去の研究である Numaguti and Hayashi (1991) で得られていた結果と本研究での結果との比較を掲載しておく. 両者は Kuo スキームを用いた計算を行っており, モデルの単純さも同程度である. 以下にまとめるように二つの点で, 本研究の計算は過去の結果を再現していない. 残念ながらその理由はよくわかっていない.

ちなみに, 用いたGCMは両者で異なっている. Numaguti and Hayashi (1991) では HS86と同じく気象庁全球予報モデルの もっとも初期のバージョンであるのに対し, 本研究のものはこれをベースに書き直したモデルである. 力学過程の基本設計は同じであるが, 物理過程は若干の違いがあり, また, 放射パラメタなど細かい数値に違いがありうる.

設定上の重要な差違は海面水温分布である. Numaguti and Hayashi (1991)HS86と同じく, 地球海洋の海面水温分布の東西平均の南北対称成分を用いたのに対し, 本研究は図1.2に記したとおり, 人工的な南北温度分布を用いている.

赤道上の降水量の経度時間断面

Numaguti and Hayashi (1991) の対応する計算に比べると, 本研究の結果では, 東西スケール 1 のパターンが強く, 同時に存在する格子点スケールの降水イベントの系列の数が多くない (図C.1). 放射の吸収係数の値をいろいろと変えてみたが, 赤道上の降水量の経度時間断面を似せることができなかった.

図C.1: 赤道上の降水量の経度時間断面図. 単位は [mm day-1]. コンターは 2 [mm day-1] のみ. 10 [mm day-1] 以上の領域が塗りつぶされている. (左) Numaguti and Hayashi (1991) fig.3b, (右) 実験 kuo-c. 図3.4(左下) Numaguti and Hayashi (1991) fig.3b にあわせて書き直したもの.

降水活動にともなう循環のコンポジット構造

Numaguti and Hayashi (1991)は, 格子点スケールの東進降水構造の維持に wave-CISK の力学が関与すると主張している. 本研究における, 東向きに伝搬する格子点降水イベントにともなう構造のコンポジット解析の結果でも, 温度, 風速場の位相の西傾, 温度場の極大値が対流圏上層と下層に存在する鉛直第二モード的構造が見られ, その主張が確認された. 一方で, 対流中心の東側 (経度 190 度付近) 上層の強い下降流, 対流中心の西側上層の正の温度偏差, 等, Numaguti and Hayashi (1991) とは異なる特徴も存在する (図C.2).

図C.2: 東進する格子点スケール降水構造に準拠したコンポジット構造. 温度 (コンター, 単位は [k]), 風 (ベクトル, 単位は [m s-1, s-1] の赤道上経度高度図. それぞれ東西平均からの偏差を示す. (左) Numaguti and Hayashi (1991)fig.8b. コンター間隔は 0.2 [K] であり, 負の温度偏差の領域が塗りつぶされている. (右) 実験 kuo-c (図3.10右上に同じ).

 

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